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「…べ、別に小さくなんかねぇし」

「いや、小さいだろ」

「小さくねぇよ!馬鹿!」

「………」

「……あ、」


コンプレックスである身長を指摘されて、おもわず愛に向かって「馬鹿」と言ってしまった。やばい、これは怒ったんじゃないだろうか?俺、もしかして殺されてしまうのではなかろうか…。



「いや、今のはその…」

「…悪い」

「………え?」


殴られる前に謝っておこうと口を開いた瞬間、先に愛の口から謝罪の言葉が出ていた。



「悪かったな。身長低い事、気にしてるのか?」

「……ちょっと、だけ」

「そうか、すまん」

「いや、…いいよ。俺の方こそ馬鹿とか言ってごめん」

「…気にしてねぇよ」


いやいやいや。
全然噂のような男じゃないよ。
というか止めろと言っても聞かずに、俺の身長の事を未だにからかってくる田嶋なんかよりも全然良い奴じゃないか。



「あのさ」

「何だ?」

「愛って、何でクラスに顔出さないんだ?」


顔だっていいし、噂とは違って全然優しそうな奴。
最初は怖がられるかもしれないけど、きっといつかは他の人達も愛が悪い奴じゃないと分かってくれるはず。女子にも男子にも好かれそうなのに…。


「………」

「…愛?」


何故教室に来ないのかと質問した瞬間、愛の眉間に皺が寄った。…あ、あれ?もしかしなくても俺って地雷級の質問をぶつけてしまったのだろうか。



「ご、ごめん。色々事情があるかもしれないのに、変な事聞いてしまって。…いや、無理に答えなくていいから、」

「………」

「…その、今のは忘れてくれ」

「いや、高島になら、話していいかもしれねぇ…」


どうせ俺の秘密もバレているし、と言うと愛は事細かく事情を話してくれた。


過去に嫌な事があったのだと。それは学校でイジメにあったとかそんな理由ではなく、俺からしてみれば贅沢な理由だった…。



「朝、目が覚めたら、知らねぇ女が俺の上で腰振ってんだよ」

「………」

「鍵も閉めていたはずなのに、俺の名前呼びながら知らねぇ女が喘いでたんだ」

「……、」

「それ以来、…俺、三次元の女が苦手というか、…大嫌いなんだ」


学校に居る女が苦手だからクラスには顔が出せないとの事だった。



「…想像してみろよ。気持ち悪いだろ?」

「…え、あ…、うん。そうだな」

「…だろ?」

今思い出しても吐きそうなくらい気持ち悪い…、と唾を吐き捨てるように言う愛に俺は、気持ち悪いどころか少し羨ましいなと思ってしまった。
だって健全な男子高校生なんだから、仕方ないよな…?



「その愛はさ、だからその…、アニメの女の子とかが好きなのか?」

「ああ。元々女は嫌いじゃねぇからな。」

「…そ、そう」

「気が付けば、この世界にどっぷり浸かってた」

「………」

「オタクなんだよ、俺」

「……オタク」


イケメンなのに女が嫌いなんて可哀想な奴だ。絶対に一生を損するに違いない。
身長が低い事よりも可哀想ではないか。

…しかし不良のくせにオタクだなんて。


「…なんか、もう」


愛って不器用で可哀想な奴なんだ。
噂とは全然似ても似つかない愛を見て、俺は深い溜息を吐いたのだった。



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