恋手帳・番外 | ナノ

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恋手帳。本編とは関係ない話。一年後くらいの未来設定?パラレル。竜輝+田嶋×恋



(第三者視点)





我が高校には他校にもあるように、色々な噂やルールがある。そしてまず俺たちの高校で有名なものはこれだ。
「三学年に居るある三人の生徒には安易に近づいてはいけない」。

むしろこれは暗黙の了解となっているようにも思える。俺も入学したすぐに覚えた


まず一人目。
名前は愛竜輝先輩。
傍からしか見た事はないが、噂通りに背も高く筋骨隆々な人だ。制服の上からでもその逞しさが分かるほど。そして何といっても、この人の恐さはあの目だろう。あの目だけで人一人は簡単に殺せそうなほど鋭く、そしてギラついている。まるで獣のような目だ。
最近になってから人前に姿を現すようになったとか。どうやら前までは自分の教室は愚か、滅多に人が居る所には姿を現さなかったらしい。
いつばったり会ってしまうかという恐怖がその時はあったようだ。どうやら一部の女子から人気があるとかないとか。


そして二人目。
名前は田嶋望先輩。
愛先輩のような恐さはこの人からは感じない。むしろ笑みを絶やさず誰とも隔てなく接するその姿には良い印象しか抱かない。そして女子からとても人気のある人だ。男子とも仲が良さそうだけど、モテる事に嫉妬している人も多いとか。
だけどこの見た目とは裏腹にこの人も怖い噂がある。
どうやら「裏の顔」というのがこの人にあるらしい。俺は学年も違うから見た事もないし全然予想付かないけど、その「裏の顔」を見せたときの田嶋先輩は愛先輩よりも怖いとかなんとか…。ゾクリと震えてしまうほどの冷たさがあるらしい。噂だから本当かどうか分からないけど。


そして三人目。
名前は高島恋先輩。
名前通り可愛い人だと思った。いや、顔が可愛いとかそういうわけではなく。身長が。これ本人に言ったら凄い怒るらしいけど、あの身長は一部の女子よりも低いと思う。この人可愛いし、一部の女子やそして男子からも人気があるけど、この人も凄い噂がある。
なんと。「愛先輩と田嶋先輩を従わせている」とかどうとか。これは俺は嘘だと思ってる。だって絶対有り得ないだろ。言ったら悪いけどむしろパシリに使われてそうだ。


この三人に安易に近付いていけないというのは、恐怖感からと、そして抜け駆けはいけないという嫉妬感の両方が組み合わさっているのだろうと俺は勝手に推測している。実際の所、この三人がどういう人物なのかは俺は知らない。きっとそれは他の生徒達も同じだと思う。
噂には尾鰭が付き物だから。



「れーんちゃん!」

「…おい、恋に触るな」


…っと。
考えてたら前方から噂の三人達が…!
俺は見つからないように物陰に隠れて身を潜めた。


「は?てめぇに指図される覚えねぇけど?」


…え?
今の声って田嶋先輩だよな?嘘、だろ…。
いつもとは全然違うじゃん。この人こんな低い声出せたのか。それに口調も悪いし。


「大体お前邪魔なんだよ。恋ちゃんの周りいつもうろちょろしてさ。」

「邪魔なのはてめぇだ」

「お前が邪魔だって恋ちゃんも言ってたよ」

「いや、俺はお前が邪魔だと言ってたのを聞いた」


しかも結構低レベルな喧嘩をするんだな。
愛先輩のイメージだとすぐに手を出して、殴って決着とか付けそうなのに。


「それに恋ちゃんは俺のだから」

「あ゛?」

「お前には渡さない」

「阿呆か。恋は俺のなんだよ。」


何これ。
高島恋先輩の取り合い?何で?


「ねー、恋ちゃん!恋ちゃんは俺の物だよね?」

「おい、恋。はっきり言ってやれ。お前は俺の物だって」


すると恋先輩は煩そうに顔を顰めて。
お二方にこう告げた。


「は?いつ俺がお前達の物になったわけ?俺は俺自身の物だし。それを言うならお前達が俺の物だろ」


朝から今更な事をほざくなよな。
煩いんだよ、馬鹿二人。

と、見た目には全然そぐわない男前の台詞を吐き捨てて、恋先輩はそのまま一人で教室の方に向かって行った。

“愛先輩と田嶋先輩を従わせている”という噂は本物だったのか…。俺は内心少しショックを受けた。


だけど一方の二人というと。


「格好いい!恋ちゃん、超格好いい!惚れた、惚れ直した!その男前の恋ちゃんを押し倒して啼かせたい!!」

「…俺が恋の物か。中々いい響きじゃねぇか」


怒るどころか、恍惚な状態で喜んでいた。



どうやらこの三人は噂とは少し違う人たちだということがものの数分でよく分かった。



END



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