一万円・番外 | ナノ

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初詣/下品/ド変態/高瀬視点







1月1日。元旦。
仁湖に会うまでは、寒くて一歩も外に出ることはなかった。だが仁湖と出会って、好きになって、そして付き合って初めての元旦。誘われれば初詣にだって行くに決まっている。
仁湖が誘ってくれるのならば。仁湖がそこに居るのならば。喜んで俺は人ごみの中にだって足を踏み入れよう。

仁湖に早く会いたくて、待ち合わせ場所は駅前ではなく、俺が直接仁湖の家に行くことにした。インターホンを押そうとした瞬間、扉が開き、愛しの仁湖が出てきた。
…ああ、いつ見ても本当に可愛い。
ファーが付いた耳当てと、口元まで隠すように巻いているマフラーがより仁湖の可愛らしさを高めているように思える。



「高瀬、おはよう」

「おはよう、仁湖」

「今日も寒いなー。わざわざ家まで迎えに来てくれてありがとう」

「俺が早く会いたかっただけだ。気にしなくていい」


正直にそう告げれば、寒さで赤くなっていた仁湖の頬が更に赤くなったのが分かった。


「…う、うん、ありがとう…」

「ああ」

「あ、そうだ。まだ言ってなかった」

「……?」


仁湖は深々と頭を下げる。
そして俺の目を見てニコリと柔らかい笑みを浮かべながら、新年の挨拶をしてくれた。


「明けましておめでとうございます」

「……、」

「今年もどうぞよろしくお願いします」

「…こちらこそ、…よろしくお願い、します」


俺も後に続くように新年の挨拶をする。
こんな台詞俺には似合わないと思う。敬語なんて滅多に使うことなどねぇし。柄にもなく少し緊張してしまったけれど、仁湖が嬉しそうに笑ってくれたから良かった。



「えっと、じゃぁ行こうか」

「ああ」


そして俺たちは人が居ない事をいいことに、手を繋いで駅まで行き、神社に向かったのだった。






*****





「なぁ、高瀬?」

「どうした?」

「何をお願いするんだ?」

「………あー」

「何?もしかして俺に言えない事?」


…その通りだ。
きっと言葉にして仁湖に教えれば、怒るに違いない。下手すれば引かれるかもしれない。…あー、でも、怒った仁湖も見たいから教えるのもいいかもしれない。
頬膨らませて怒る仁湖は貴重だからな。
運良くムービーでも撮れればいいが、そんなことをしたら余計に怒らせてしまうだろうから、やはり言わない方がいいだろう。



「…人に言ったら、願いが叶わないって言うだろ?」

「うーん、そうか…」


高瀬の願い事が叶わないのは嫌だから聞かない事にする、とはにかみながら笑う仁湖は殺人的に可愛かった。


「…仁湖の願い事も俺には秘密か?」

「ふふん、秘密!」

「そうか…」


ああ、可愛い。
もう抱きしめたい。この笑顔を俺だけの物にしたい。
いっそ仁湖と二人きりの世界にしてくださいと願うべきか?…まぁ、俺は神とやらは信じていねぇが。叶えてくれるならば、どんなことだってしてやるよ。


だから俺は昨日一晩寝ずに考えた事を、隣に居る仁湖の真似をするように手を合わせ、目を閉じて、頭の中で数回唱えたのだった。





“今年も仁湖が健康でいれますように。そしてあわよくば、媚薬を飲んだ仁湖にフィストファックプレイが出来ますように。”





END



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