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クリスマス話/甘々
クリスマスに恋人に何を贈る?
その恋人は自分と同じ男の子。だけど自分とは比べられないくらい格好良くて男前。私服もいつもお洒落。その人はいつも高そうなアクセサリーを身に付けているというのに、安っぽい物なんて贈れられない。
だけど、自分の限られた小遣いからではそんな高価な物は贈れそうにない。
「…どうしよう」
何を贈れば高瀬は喜こんでくれるだろうか…。
プレゼントは気持ちの問題だというけれども、やっぱりあげるからにはちゃんとした物をあげたい。高価な物でなくても、実用的な物とか。
俺は売り場をうろうろと彷徨いながら売り物を物色した。
「…うーん」
…それから目ぼしい物を見つけるまで数時間も経ったというのは内緒だ。
****
「高瀬、おはよう」
「…ああ」
そしてクリスマス当日の朝。
俺はドキドキしながら、高瀬を家に迎え入れた。それは、クリスマスに恋人を家にあげた事ももちろんあるが、用意したプレゼントを気に入ってもらえるかどうかも全部含めてだ。
「えっと、いつも通り親居ないから楽にしてていいから」
飲み物持ってくるから適当に座ってて、と高瀬に言えば「…飲み物はいらない」と言われてしまった。
「…喉、乾いてない?」
「いや、有りがたいが…俺はそれよりも早く仁湖に渡したい」
そう言って高瀬が鞄の中から取り出したのは、綺麗にラッピングされた袋。高瀬も俺のためにプレゼントを買っていてくれたのだ。
「…これ…、」
「メリークリスマス、仁湖」
「…た、かせ」
渡されたプレゼントを受け取れば、嬉しそうにほほ笑む高瀬。幸せそうな高瀬の顔を見て、俺も照れながらはにかんだ。
本当にうれしいな。
俺も高瀬にプレゼント渡した方がいいよな?で、でも。
「あのさ、開けてもいい?」
先に開けてみたいのが本音だ。
遠慮がちに聞けば高瀬はコクリと頷いた。
「ありがとう」
俺は袋もリボン千切れないように丁寧に中身を取り出す。なんか凄いドキドキする。
そして中に入っていたのは、暖かそうな手袋。
「これって、」
だが左右の柄は違う。
「仁湖、これな。恋人同士が付ける手袋のようだ」
「……、」
「…お互い片方だけ付けて、そして手を繋いで外を歩けるようになっているらしい」
「…高瀬」
「気に入って、もらえなかったか?」
「ち、違うよ!」
凄いうれしい。
嬉しいのは確かだけれども、俺はそれ以上に戸惑っている。俺は用意していたプレゼントを高瀬に渡す。
「仁湖?」
「…こ、これ開けてみて」
「あ、ああ」
そして高瀬は戸惑いがちに俺が渡したプレゼントを開ける。そして中から取り出した物を見て、更に驚いている。
「仁湖、これは…」
「高瀬へのプレゼント」
「だが、これ…」
「お、俺も高瀬と同じ物をプレゼントとして用意してたんだ」
柄などは違うけれど、用途は一緒だ。
俺も恋人同士で使う手袋というものを見つけて、少し恥ずかしかったけれど、これを高瀬にプレゼントしようと思ったのだ。だって、何かこれって凄く恋人らしく外を歩けるってことだろ。
まさか高瀬も同じ物を用意してくれているとは思わなかったけれど。
「俺たち一緒の物を用意してたんだな」
「…ふ、何か嬉しいな」
「う、うん。俺も」
「今日の夜は、これを付けて街に行くか」
高瀬は幸せそうに俺が渡したプレゼントを見ながら、そうつぶやいた。
「えー、今日はこっちを付けて行こうよ」
しかし俺も負けずと高瀬から貰ったプレゼントを手に取り案を出す。
そして俺たちは顔を見合わせて笑った。
「高瀬、本当にありがとう」
「仁湖もありがとう」
「夜が楽しみだなぁ」
俺の想いが通じたのか、今日は高瀬から貰った方の手袋を付けて外を歩くことに決定した。そして明日は俺がプレゼントした方のプレゼント。
ああ、本当に夜が楽しみだなぁ。
そして恋人用の手袋を付けたまま街のイルミネーションを見ながら、更に高瀬に指輪をプレゼントされておもわず嬉しくて泣きだしたのは、…まだ少し後の話。
END
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