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<内容>
・一万円(前回書いた「届かない、伝えたい」の高瀬視点)
・詳しいカップリングは高瀬×仁湖←桐生
・高瀬が少し病んでいます。
高瀬視点の要望があったので、調子に乗って勢いで書いた文章です。まさしく俺得。
仁湖が他の男と喋ったりしているのが嫌だという方には、お戻りになられることを推奨します。
以上の内容が大丈夫だという方は、どうぞよろしければスクロールお願いします。
俺が気付かないわけがない。
仁湖の事を“そういう目”で見ている奴が近くに居るということを…。
「高瀬、どうかした?」
「……何でもねぇよ。」
牽制するべく、仁湖の事を見ている男を睨めば、俺の異変に気が付いた仁湖がすぐ様俺に声を掛けてきてくれた。
安心させるために髪の毛をクシャッと撫でてやると、仁湖はまるで子猫のように目を細めて笑みを浮かべる。…可愛い。本当に仁湖は可愛い。
この笑顔も、泣き顔も、怒った顔も、…全部俺だけのものだ。
あの男にも、他の野郎共にも見せたくない。
仁湖の魅力に気付くのは俺だけでいい。
ああ、苛々する。
勝手に“俺の”仁湖を見るな。
お前がそのいやらしい目で仁湖を見る度、俺の仁湖が汚される様な感覚に陥る。
……殴りたい。
二度と仁湖の目の前に現れないように、徹底的に殴ってやりたい。…だが、仁湖の嫌いな暴力は極力したくないのが本音だ。例え仁湖が気付かないとしても、仁湖には嘘は吐きたくない。
……大丈夫。
仁湖は俺だけのもの。
他の誰のものにもならない。
俺が一番仁湖を愛しているし、仁湖を幸せに出来る自信がある。
そうやって俺は何度も自分に言い聞かせる。
こんな狂った感情を抱いたまま冷静に居られるわけがなく、俺は一度頭を冷やすべく席を立ち上がった。
「何処か行くの?」
「便所。」
行き先を一言で告げると、みるみる内に仁湖の頬が赤くなるのが手に取るように分かる。
きっとあの時の事を思い出しているに違いない。…本当に仁湖は可愛い。
「一緒に行くか?」
茶化すように笑って言えば、仁湖は顔を真っ赤にして怒り出した。
「ば、馬鹿…っ!い、行くわけないだろ…!」
何度だって言おう。
仁湖は本当に可愛い…。
照れたその表情もまた一段とそそるものがある。
俺はもう一度仁湖の頭を撫でて、「行ってくる」と告げてから教室から出た。
………そして教室に戻ってきた俺の視界に入ったのは仁湖とあの男が喋っている所…。
どもりながら必死に何かを伝えている仁湖。
仁湖の頬に手を添えている男。
……殺してやりたい。
「あ、高瀬おかえり。」
「………仁湖、」
「…?…、どうかした…?」
あの男と話が終わったのか、仁湖は俺を見つけると小動物のようにちょこちょこと俺の側に寄ってきた。
その可愛らしい姿に、少しだけ平静を取り戻す。
「……あの男、」
「桐生のこと?」
仁湖が他の男の名前を呼んだことにすら嫉妬をする俺は狂っているのだろうか…?仁湖は俺だけを見て、俺だけの名前を呼べばいいんだ。
「……俺とどっちが好き?」
「……はぁ…?!」
「どっちだ?」
「な、何をいきなり……っ、」
「仁湖。」
早く答えろと目線で告げれば、仁湖は観念したのか俺から視線をはずして、頬を赤らめながら…、
「…高瀬に、決まってるだろ…っ」
そう言ってくれた。
「…というか、比べるまでもないことなのに、…一々訊くなよな。…馬鹿…っ。」
…本当に堪らない。
仁湖は無自覚でやっているのだろうが、恥かしそうに俺と視線を合わせず外方を向く所とか、…もう全部が愛おしくて堪らない。
「…俺も仁湖が好き。愛してる。」
「………う、ん…」
嫉妬だってする。独占だってしたい。
それは全部仁湖が好きだから。仁湖が可愛くて愛おしくて堪らないから、束縛したい。
報われない恋をした男を嘲笑う。どう足掻いても仁湖は俺だけのもの。END
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