一万円・番外 | ナノ

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<内容>
・一万円(以前書いた「ドキ☆パラの続編のようなもの)
・タカニコではない
・いや詳しくいえば高瀬×仁湖←プラスα

以前出た仁湖に思いを寄せ始めた男のあまりに人気に嫉妬して、カッとなって書いただけの文です。
仁湖が他の男と喋ったりしているのが嫌だという方には、お戻りになられることを推奨します。
以上の内容が大丈夫だという方は、どうぞよろしければスクロールお願いします。







何もかも受け入れたくなかった。
中村は高瀬葵のものなのだと。
…そして、中村に抱いている自分の気持ちが何なのかとも。

悩んで、悩んで、やっと見つけた“答え”だったからこそ、自分の気持ちを受け入れられたときは、何故だか気分が良かった。


…俺は中村仁湖が好きなんだ。


しかしある意味自覚してからの方が大変だった。
未だに鮮明に蘇る“あの時”の光景。
大粒の涙を零しながら射精する中村。
中村の掠れた喘ぎ声。
…頭から離れず、俺を苦しめる。
その時の夢を見てこの歳になってまで、夢精をしたくらいだ。何度中村をおかずにしたことか…。
何度抜いても足りない。物足りない。手の平に掛かった自分の吐き出した精液を見て、言いようのない虚無感が俺を襲うのだ。


…そして極めつけは、

ずっと一緒に居る二人の様子を教室で見なければいけないことだ。隣同士机を引っ付けて、一時も離れず側にいる二人。中村を見れば嫌でも、憎き高瀬葵が目に入るのだ…。
…ああ、苛々する。むかつく。
あの中村の笑顔も、怒った顔も、拗ねた顔も、全部俺だけのものになればいいのに。
俺だけに見せればいいのに…。


『遠くから見ているだけでいい』

…そんなことは所詮綺麗事。
俺にはそんなことは性に合わない。
近くで見たいし、喋りたいし、触ってもみたい…。


「……クソ、」

舌打ちをすれば、隣の席の奴が大袈裟な程に肩を震わせて怯えた。そんなことにすらむかつく。
こっちを向け。
俺を見ろ。
俺だけを見ろ。


……するとそんな事が通じたのか、


何と中村がこちらを見た。


「…………っ」


これは俺の気のせいだろうか?
澄んだ綺麗な瞳が俺を映しているような気がする。
逸らせない。逸らしたくない。
…今ほど一秒がもっと長ければいいのにと思ったことはないだろう。

このまま時間さえも止まってしまえばいいと思うも、やはり無常にも中村の視線はすぐ逸らされた。

そして何事もなかったかのように中村は机の中を漁り始める。


「………」

どうせ俺の事なんて見てもいなかったのだろう。
きっと俺の思い込みだったんだ。
でも、…それでも十分な程俺は嬉しかった。
目が合うだけでこんなにも嬉しいと思うなんて、もう末期だな。
この例えようのない気持ちを忘れてしまわぬ内に今日は帰ろうと思い、俺は席を立ち上がろうとした。


「……き、桐生……、君!」


しかし目の前には俺が思いを寄せる人物が居て、帰ることなど出来なくなった…。
………今、…俺の名を呼ばなかったか?

混乱している俺に気付いていないのか、中村は何処かそわそわしながら話を続ける。


「あ、あのさ…!」

「………」

「委員会の、あ…、アンケート、出して、……くれる?、……いや、出して貰えると嬉しいんだけど、」


……中村が、俺の目の前に居る。
俺の名前を呼んだ。中村から話し掛けてくれている。
…何だこれは?
夢のようなことに信じられず、俺はおもわず目の前に居る中村の頬にそっと手の平を添えた。


「き、…桐生……?、な、何して…、」

「…………中村、」

「…あ、の、…アンケート…っ」

「…俺の、名前知ってるのか…?」

「え?」


…俺は馬鹿野郎だ。
もっと言いたいことはたくさんあるはずなのに。
何故今こんなことを訊いたのだろうか?


「え、…あ、…えっと、」

「………っ、クソ、…気にすんな…」

「いや、…その、知ってるよ。

……当たり前だろ…?」


中村はふわりと笑みを浮かべて、「アンケート出してくれると嬉しいです。」と言うだけ言って、まるで逃げるように俺の側から立ち去った。


「……………」


“当たり前”…。

俺は今間違いなく、中村と視線を合わせた。
喋った。名前を呼んで貰えた。…そして触った。


「………っ、…クソ、」


次第に頬が熱くなっていくのが分かる。
……柄じゃねぇ。


「……嬉しい過ぎるだろうが……っ、」


自分の名前を呼んで貰えたことが、中村に触れたことが、こんなにも嬉しい事とは思ってもいなかった。
中学生のような低レベルなことに一喜一憂してしまう自分が居る。……これ以上浮かれた面を周りに見せるわけにはいかず、俺も逃げるようにその場を立ち去ったのだった。




やっと恋の芽が出てきた。



END


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