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26000000番、闇友様。付き合いたて/ほのぼの/甘々
・高瀬side
「高瀬、…あ、あのさ…?」
「…どうした仁湖?」
現在、教室で数学の授業中。
授業中だからか、仁湖は顔を近付けてきて俺の耳元で小さい声で囁いてきた。仁湖の吐息が俺の頬や耳に掛かることに、凄く至福を感じる。
このまま頬にでもいいからキスをしてくれればいいのに、とも思うのだが、さすがに付き合い始めて日が浅い上に、仁湖は恥ずかしがり屋だから、そこまで望んではいけないだろうと心の中で自分に言い聞かせる。
まぁ、こうして仁湖から話し掛けてきてくれるだけで俺は嬉しい。
「仁湖?」
「…あ、えっと、いや…、やっぱり何でもないや…っ」
「………」
しかし一体どうしたものか…。
何かを俺に伝えようとしているのだが、仁湖は内容まで喋ってくれない。こうして中途半端に伝えられると、余計に言葉の続きが気になってしまう。
だが無理に訊き出すことも出来ない。
俺はどうすることも出来ずに、ただ綺麗に纏められた仁湖のノートを眺め続けた。
「………た、かせ…?」
…すると再び、俺の名を呼ぶ仁湖の声が聞こえてきた。俺は視線を仁湖に戻す。
「どうした?」
「…あのさ、」
「……ん?」
仁湖の言いたいことが凄く気になる。
…だが焦って聞き出しては駄目だ。
きっとそんなことをすれば、二度と聞くことが出来なくなるだろう。
ここは平然を装って、仁湖から喋り出すのを待つのが吉だ。
「……そ、その、」
「…何だ?」
「えっと、」
仁湖の白い頬が桜色に染まる。
ああ、それすらも可愛い。
ここに誰も居なければ、すぐにでもその柔らかい唇を奪って、感触や体温、仁湖の声を堪能するというのに…。
「あ、のさ、お願いが、…あるんだけど…」
「……お願い?」
「う、うん。」
「仁湖が望むのなら、俺は何でもしてやるよ。」
本心からそう言えば、仁湖は嬉しそうに笑顔を浮かべる。
仁湖の“願い”とは何だろうか。
本当に俺が出来ることなら何でもしてやりたい。
もしも俺に出来ないことだとしても、仁湖のためなら叶えてやりたい。
「…あ、のさ、」
「……?」
「………手、
……繋いでもいい?」
恥ずかしそうに頬を赤らめて、上目遣いで俺にこう告げてきた仁湖。
…あまりの可愛さに、思わずクラリとした。
“ああ、だからこそ君が好きなんだ。”
教卓の近くに居る教師にも、周りに居るクラスメイトにも、見えないように、俺達は机の下でこっそりと手を繋いだ。
END
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