一万円・番外 | ナノ

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夕日い理由







これは二人が付き合って二週間が過ぎた頃の話…。








高瀬と仁湖は思いが通じ合えて、恋人同士になれた。
席は隣同士。瞬間接着剤で机はくっ付いたままで、授業中も昼休みも、ずっと一緒。



…もちろん、放課後も。




高瀬が仁湖を学校から家まで送っていくのが、毎日の日課。
この時間帯はいつもならとっくに帰っている時間なのだが、、今日は仁湖が委員会で召集されているため、高瀬は夕焼けが当たる教室の中、一人で仁湖を待っていた。

もちろん仁湖は、「ごめん、先に帰ってて。」と高瀬に告げたのだが、高瀬は首を横に振って、仁湖の帰りを待つと言う。


高瀬の言葉に、仁湖は少し申し訳なさそうに、そして何処か嬉しそうにはにかんで、早足で召集場所へと向かったのだった。









______






「……ごめん、高瀬!…思ったより、長くなって、……って、あれ?」


委員会の用事が終わった仁湖は、すぐさま高瀬の待っている教室に戻ってきたのだが、…そこには、



「…寝てる?」



机に突っ伏して眠っている高瀬が居た。


どうやら温かい夕焼けの日差しの気持ち良さに、眠ってしまったようだ。
気持ち良さそうに寝ている高瀬を起こすべきか、それとも起きるまで待つべきなのか、仁湖は少しだけ考えた結果、やはり風邪を引いては元も子もないと思い、高瀬を起こすべく声を掛ける。




「……高瀬、おーい高瀬!」


「………ん…」


「風邪引くぞ?ほら、帰ろう?」




しかし高瀬は少し反応を見せるだけで、起きる気配を見せない。




「高瀬、起きろってば。」


こんな時間まで待たせてしまって、しかも気持ち良さそうに眠っている高瀬を起こすのは少し戸惑ってしまうが、仁湖は諦めず高瀬に声を掛け続ける。



「たーかーせー!」


…しかし高瀬は起きない。



「起きてよ。」


「………ん…」


「高瀬、風邪引いちゃうからさ。」


ほんの少しだけ身体を揺さぶってみる。だがやはり高瀬は起きない。


中々起きてくれない高瀬に仁湖は諦めたのか、ふぅ…と溜息を吐くと…、






「早く起きて、構ってよ…。



馬鹿、葵……っ」





…とボソリと呟くと、真っ赤な顔をして、自分の着ていた学ランを高瀬の広い背中に掛ける。
そして熱くなった頬を冷ますためか、手洗い場まで逃げるように走って出て行った。












「………くそ…、



反則だろ、あれは……っ」





…実は仁湖が教室に入ってきたときから起きていた高瀬。狸寝入りをしていた高瀬は、教室から出て行った仁湖の学ランを抱き締めると、仁湖と同じように赤くなった頬を隠すように、もう一度机に突っ伏したのだった…。






構って欲しいのなら、好きなだけ構ってやる。



だからせめて、



名前を呼ぶのなら、俺の目を見て、俺の心の準備が終わったときにしてくれ。









夕日が赤い理由?



その答は簡単。



真っ赤になった頬を隠すためだよ。






END



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