短編集 | ナノ

 卑怯過ぎる願い事



卑怯過ぎる願い




兄×弟/エロ無し/甘々/ショタ/クリスマス






俺には小学生の弟が居る。今年で7歳になる弟と今年で17歳になる俺。あまりにも歳が離れすぎている。だからまともに話した事もないし、遊んであげた記憶もない。
俺は子供が大嫌いなんだ。すぐ泣くし、我侭だし、頭が悪いし、理論が通じない。だから俺は弟と馴れ合うつもりも関わるつもりもなかった。


「…お兄ちゃん?」

「………、」


…だがそれは今日で終わりのようだ。どうやら俺は親に弟を押し付けられたらしい。仲のいい両親からしてみれば、クリスマスという日に俺たち子供は邪魔なのだ。二泊三日の旅行に行くからと言って、弟の世話を押し付けられてしまった。…全くついていない。


「…………」

「お兄ちゃん、僕の所にもサンタさん来てくれるかな?」

「…知らねぇよ。」

「いい子にしてれば来てくれるよね?」

「…あぁ」

鬱陶しいと思いつつも、弟のくだらない質問に答えてしまうあたり、俺はまだマシなのかもしれない。
適当に相槌を打っているだけで、まともな回答を言ってあげてはいないのだが…。
去年は両親がプレゼントでもくれたのだろうが、その両親は今旅行中だ。“サンタ”とやらは絶対来るはずもない。


「僕ね、紙にお願い事を毎年書いてるんだよ。」

「…………」

「僕の願い事、絶対叶えてくれるの。」

「……………」

「サンタさんって、本当に凄いよね!」

無垢な笑顔でそう言う弟に「残念だな、今年は叶いそうにねぇな。」と言えるわけもなく、俺はコソコソと紙に願い事とやらを書く弟に「早く寝ろ」と就寝を促した。


「…一緒に、寝てくれる?」

「……阿呆か」

「駄目…?」

「…しつこい。」

「じゃぁ、寝れるまで一緒に居てくれる?」

「…………」

内心舌打ちをした。
一緒に寝るなんてそんな面倒な事俺がするわけもない。今にも泣きそうになりながら目を潤ませる弟を見て、俺は仕方なく弟が寝るまで側に居ることにした。
……泣かれると、面倒だからな。

それから弟は聞きたくもない自分の学校の情報と友達の話を延々と語った後、明日の事を話していた。「願い事叶うかな?」と不安げに話すのだ。……そんな事俺の知ったことではない。
時々気が向いたときだけ相槌を打ちながら、読まないままでいた本を読み続けた。



「……………」


…そして数十分経ったくらいでやっと弟は眠った。
静かになった室内から早々と出て行こうとした瞬間、俺の視界に入ったのは、弟が願い事とやらを書いた紙。


「………」

ほんの好奇心だったのだ。
願いが叶う事をあんなに楽しみにしていた弟の願いとやらは何なのか。枕元に置かれていた折りたたまれた紙を開く。


「………っ、」

そして俺は書かれていた願い事を見て、絶句した。
まさか弟がこんな事をわざわざ願っていたなんて思いもしなかった。無意識に熱くなる頬。
…すやすやと暢気に眠る弟の顔を見て、起こすわけにもいかず、だがこの悶々とした気持ちを発散する方法も分からず、俺は舌打ちをする。


「……クソ、」

仕方ない。こんな事を書かれて我慢出来るわけがない。
弟が全部悪い。俺の所為ではない。


「……これからどうなっても知らねぇからな。」


一緒に寝ようと言ってきた弟の隣に腰を下ろし、俺は丸くなって眠る弟を抱き込むように、隣に寝転がった。


子供は嫌いだ。すぐ泣くし、我侭だし、頭が悪いから理論も通じない。

……だが、弟は特別かもしれない。



「…馬鹿弟。お前の願い事、叶っただろ?」





サンタさんへ

ことしはぼくのところにこなくてだいじょうぶです。

おにいちゃんとふたりきりでいっしょにいたいから、じゃましちゃだめです。

わがままでごめんなさい。





END



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