後ろを振り向いて俺を見てくる高瀬に、心臓バクバク。また蹴られるんじゃないかと、内心冷や冷や。
そしてこちらに伸びてきた高瀬の大きい腕にビクッと身体を震わせる俺。
「……ヒァ…っ」
恐怖のあまり情けない声が出てしまったが、それは仕様がない。
ポフ。
「…………ん…?」
待ち構えていた痛みはなく、その代わりに頭に温かい重みを感じた。
「……た、高瀬?」
クシャクシャと髪を掻き混ぜるように撫でられ、何事かと俺は高瀬の顔を見上げる。
「………悪ぃ、…さっきは言い過ぎた。」
見上げるとそこには、申し訳なさそうに顔を顰める高瀬が居た。
え?
…た、高瀬が謝った?
お、俺に?何で?
「…お前の気が済むまで何度だって謝るから、嫌いにならないでくれ。」
「た…かせ…?」
何だ?
これは高瀬なのか?
こんな優しい人がくりょうのトップ?
「…許してくれるか?」
「ちょ、ちょっと待って!ゆ、許すとか許さないとか以前に、俺は高瀬に怒ってなんかないよ。
…む、むしろ俺こそ高瀬に呆れられて嫌われたのかと思って、不安だったし……」
「……俺はお前のこと嫌いになんてならねぇよ。」
日光をバックに、優しく微笑む高瀬に胸が高鳴る。
……え、高鳴る?
いやいやいや、これは違うぞ。
別にドキッとしたわけじゃなくて…っ。
高瀬が格好いいから、羨ましかっただけなんだ。うん、そうだ。
「………あ、…えっと、…と、とりあえず家に行こうか。」
「あぁ、…そうだな。」
高瀬はクシャクシャと撫でていた頭から手をずらし、俺の頬をツー…と上から下になぞると、手を離した。
「……ん……」
くすぐったくて、おもわず声が漏れてしまった。
俺の歩調に合わせて歩き出した高瀬の隣を歩く。
そしてふと俺は思い出す。
高瀬に袋持たせたままだった。
すぐに奪い取ろうと思ったのだが、そこでピタッと手を止める。
またこんなことしたら、さっきみたいにギスギスした空気になっちゃうじゃないだろうか?
そうだ。
絶対にそうだ。
だから俺は考えた。
高瀬が持っている袋の取っ手部分を一つ持つ。
これで半分こだ。
高瀬が不思議そうにこっちを見ているので、ニコっと笑みを浮かべれば、高瀬もふっ…と笑い返してくれたような気がした。
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