授業開始ギリギリで教室に戻る。
ふふふ、やっと手に入れたぜ。
これで高瀬と机を引っ付けなくて済むはずだ。
これで俺はより快適な授業を受けれるはずだ。
俺は嬉しくて口笛を吹きながら、自分の席に近づく。
不良のクラスメイトが、「こいつ大丈夫か?」と、阿呆の子を見るような目で見てきたけど気にしない。
なんたって、俺は今機嫌も気分もいいから。
そして俺は席に着く。
…えっと、どういうタイミングで高瀬に教科書を渡せばいいかな?
まずは何て言えばいいだろうか。
んー、「高瀬教科書持ってる?」と最初に聞けばいいかな。
うん、これで大丈夫なはず。
ま、まずは自分から高瀬に話掛けないと。
「……た、高瀬。」
「…あ゛?」
高瀬の物凄く機嫌の悪い声に、俺はビクッと身体を震わせる。
え?
えぇっ?!
な、何?
ど、どれがいけなかった?
高瀬って呼んだこと?
勝手に呼び捨てにするなってこと?
何々?「高瀬様」って呼ばなきゃ駄目ですか?
あぁぁー、混乱してきたー。
「…“高瀬”?」
「……え?…苗字、…高瀬だよね?」
もしかして俺間違ってた?
…いやいや、それはないよ。
間違ってない。
…じゃぁ何で高瀬って呼ばれて怒ってるんだ?
何だよ?
“葵ちゃん”って呼んだときは怒らなかったくせに。
何で高瀬って呼んだときは怒ってるんだよ?
も、もしかして“葵ちゃん”が気に入ったわけじゃないよな?
あはははは、それは絶対ないな。
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