▽ 歌の主1
サイバトロン総司令官。
それが彼、ライオコンボイの肩書きだ。
今日も惑星ガイアの平和を守る為、破壊大帝ガルバトロン率いるデストロンと戦っている。
が、今日は違った。
「…美しい自然だ…」
ライオンの姿で、コンボイは喋った。
「ライオコンボイ」と名乗っているのは、ライオンにスキャンしたからである。元の名前は「コンボイ」だ。
「キッドやビックホーンの事は自分に任せて、今日くらいは休んで下さい」
副官のアパッチの言葉を思い出し、ライオコンボイは笑みを浮かべた。
「全くアイツは…」
サイバトロン副官のアパッチ。とても頼りになるマンドリルで、自分によく尽くしてくれる。コンボイ部隊結成以来はずっと一緒だが、改めて考えるとありがたい存在だ。
今日だってライオコンボイの体調を心配して、あんな事を言ったんだから。
「さて…せっかくの休みだから外へ出てみたのはいいが…」
サイバトロンの船でスリープモードになるのもいいが、それではもったいない。惑星ガイアの自然に触れて来よう。
…と思ってぶらぶらとしていたが…ただ歩き回るだけではもったいない気もする。
「猫らしく、何処かで昼寝でもしようか…」
日の当たる場所を探そうと辺りをキョロキョロと見渡した。
すると、ライオコンボイの聴覚センサーがある音を捉えた。
「…鳥か?いや、鳥が喋るはずがない…」
聞こえてくるのは、ちゃんとした言葉が組み込まれているもの。ガイアの生き物でないとしたら、別のサイバトロンの戦士だろうか。
「(行ってみよう…)」
ライオコンボイは耳をピクピクと動かし、声のする方へ歩いて行った。
茂みを出ようとして、ライオコンボイは止まった。歌の発信源を見つけたのだ。
ライオコンボイはその種類の生き物を初めて見た。後ろ姿しか見えないが、不思議だった。
髪が銀色で視覚センサーでさらにアップで見てみると、耳がキッドみたいに尖っていた。二本足でしっかりと立ち、崖っぷちで空に向かって歌っている。
「(この星には、あのように二本足で立つ生き物がいたのか…)」
ライオコンボイはしばらく歌に聴き入っていた。聴いていると、少し切なくなった。
しばらくして、急に歌が止まった。ライオコンボイは少し残念だと思った。もうちょっと聴いていたかった…気がする。
「誰?そこにいるんでしょう?」
声の主はライオコンボイのいる茂みの方を見て言った。女性のようで、声音が警戒の為かピリピリしている。
バレているだろうか。
「出て来て下さい。気になるんです」
隠れていては反って怪しまれるかもしれない。そう思ってライオコンボイは茂みから体をあらわにした。
「…レオ?」
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