▽ 奴の本気1
「ルイ!!」
聞こえてきた声に、まただ、とルイは怒りに震えながらため息をついた。
そして怒る前に先制攻撃をされる。
「こんにちはルイ」
「わ…」
振り向く前に後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれた。
彼、スタースクリームのこの甘い攻撃で、ルイはいつも固まってしまう。
そう…いつも
「スタースクリーム!!抱き着くなって言ってるでしょ!!」
「あら。毎度の事ながら照れちゃって、ルイは可愛いわねー」
「照れてない!!」と言い返すが、スタースクリームの聴覚センサーにはもはや届いていない。さらに、抱きしめるわほお擦りまでするわでルイのスパークは今にも破裂しそうである。
「スタースクリーム!!」
「あら」
ルイはスタースクリームの熱い抱擁から脱出し、彼と向き合った。
今まで堪えてきたが、もう我慢の限界だ。
「なんであたしに付き纏うの!?」
「いけないのかしら?」
反省の色も何もないスタースクリームの言葉に、ルイは驚きと怒りでとうとう今まで思っていた事をすべて吐き出した。
「スタースクリームのそういう所嫌い!」
「!」
「嫌い」、とうとう言ってしまった。けれど本当はそんな事思っていない。
スタースクリームのいつもの抱擁とか甘い言葉のせいで、自然とスタースクリームにときめくようになってしまった自分。
それが何だかハメられたような、騙されたような感じがして…すごく悔しい。
けれど、スタースクリームを好いている自分もいるから余計に悔しい。
「好きでもないくせに近寄ってきて、平気で抱き着くし、そんな事を軽くやってのけるスタースクリームはおかしいよ!」
「ルイ、ちょっと待ちなさい」
頭では止めなきゃって分かってる。けれど、止まらない。
こんな気持ちにさせたのは誰だ。本気じゃないくせに。
「それにあたし、スタースクリームみたいな男じゃないようなトランスフォーマー好きじゃないし…!」
ダン!!
突然肩を尋常じゃない力で押され、何処かにたたき付けられた。衝撃で一瞬目の前が真っ黒になる。たぶん、声も出たと思う。
「ルイ、自分が何を言っているのか分かる…?」
やっと視界が正常に戻った時、ルイは自分がすごく危険な状態にある事を悟った。
いつの間にかルイは壁とスタースクリームに挟まれていて、身動き出来ない状態だった。
「スター、スクリーム…」
まずい。非常にまずい。ルイのスパークは恐怖ではち切れそうだった。
彼の目は怒っているし、部屋の照明が彼とちょうど被っていてさらに怖い。
「男じゃないような…って言ったよな…?」
「え…?」
ルイは聴覚センサーを疑った。聞き間違いだろうか。
スタースクリームの今の文末に「よな?」とついた。いつもなら「わよね」とか「ね」で終わるはずなのに。
そう思考を巡らせているのに夢中になっていたルイは、
クイッ
彼の左手が、自分の顎を捕らえようとしていた事に気付かなかった。
スタースクリームはルイの顔を無理矢理近付け、囁いた。
「俺だって、男なんだよ」
いつもより低い声で、口調も全く違うから、別のトランスフォーマーみたいで…
そうルイが思考を巡らす暇も無く、
カシャン
スタースクリームのマスクが消えると同時に、彼の隠れていた口が、ルイの唇を捕らえた。
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