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そういえば、ユニカを王城に連れ帰ったあの年から、避暑のために息子と王都を離れる十数日のほかは、どれくらいきちんと眠っていただろう。
先へ先へと進む思いに身を任せ、あまりにも自分のことを顧みなかった。立ち止まるのが怖かったのだ。
だって、クレスツェンツのあとには大勢の人間が従って歩いてくる。彼女が止まれば隊列も足を止め、出来上がった流れが停滞する。
そしてクレスツェンツひとりの体力では、最後まで隊列を導いていくことが出来ないのも分かっている。今のうちに少しでも遠くへ進んでおかなければ。
でも。
兄夫妻や、オーラフや侍女たちの今にも泣き出しそうな顔を思い出したところで、クレスツェンツは目を覚ました。
隣の道を歩いていたはずの標(アヒム)はいない。
けれど、行き先や歩く速度に不安を覚えたときに話し合える人々が、振り返ればたくさんいたのだ。
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