天槍のユニカ



いてはならぬ者(22)

 その瞬間、二度目の電撃。
 剣は胸を逸れて腹部に刺さり、ユニカの呻き声と兵士の悲鳴が重なった。
 先程より強力な電流は兵士の右腕を焦がしていた。彼は束の間痛みに悶えていたが、何としてもユニカの息の根を止める決意をしているのだろう。左手で剣を拾い再び向かってくる。
 焼き殺してしまおう。
 目の奥で、青い光がバチバチと激しく弾けていた。
 この光でこの男を包んでしまえ。
 冷えた胸の奥で何かがはち切れようとした瞬間。
「やめろ!!」
 怒号に、ユニカは呼び戻された。
 我に返った途端、どっと左肩に衝撃が走る。突き立てられた赤い剣。わき上がる痛みが呼吸を邪魔する。
 身体から力が抜けていくユニカを見下ろしながら、兵士は剣を棄てかすかに笑って身を翻した。
 血の臭いが胃からせり上がってくる。
 痛みと出血で視界が暗くなる中、石像に寄りかかったままユニカはずるずると座り込んでいった。
 誰かが叫びながら駆け寄ってくるが、鋭いはずのその声もぼおっと響くだけで、何を言っているのか分からない。
 遅れて襲ってきた恐怖に、ユニカは涙をこぼしながら目を閉じた。






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