結ばれるには密で
「できたよ。」
「ありがとうございます。」
鬼灯に薬膳粥を準備した。
それも手の込んだもの。
「....相変わらず美味しいですね。」
「当たり前だよ。薬膳ばかり前に出ないように、味もちゃんとしてるからね。」
鬼灯は僕の作ったものを食べるときだけ素直だ。
作法とか礼儀とか恩恵とか。たぶんそんなものなんだろうけど、ちょっと不思議な感じがする。
「白澤さんはきっといい奥さんになりますね。」
これは皮肉。
「お前僕をなんだと思ってるんだよ。」
朝早くで特にする事もないから、食べる鬼灯を正面から見てる。食べるところを見られるのが嫌いみたいで、たまに怒られる。
「お前はずっと、決まった人を作らないよな。」
結婚しないのか、ってちょっと遠回しに聞いた。
鬼灯は食べる手を止めて真っ直ぐ僕を見る。
「特に気になる女性はいませんから。」
「へえ。」
秀逸だ。
「仕事が一番だからとか言うのかと思ったよ。」
「結婚したところで、仕事に支障は出しません。」
薬膳粥、少し作りすぎたかもしれない。
鬼灯はまだ食べてる。
「今の生活のままで結構なんですよ。」
何度も言わされた言葉みたいに、鬼灯はため息をついて言う。
「こんな四六時中生真面目な生活送ってたら身が持たないだろ。」
「貴方と居るときは精神なんか使ってません。」
いや、
「お前、さっきから僕にプロポーズしてるだろ。」
「ごちそうさまでした。」
変なタイミングで食べ終わったものだ。
ぴしゃりと言葉を断ち切った鬼灯は、後処理でもするかのように「おいしかったです」と言う。
「後々しこりになるようなことを言ってはいけません。」
最もだった。器の片付けをする僕の背中に言葉がささる。アハハ、と苦笑いをしてまた鬼灯の向かいに座った。
「コレはいいんだ?」
机上に投げ出された鬼灯の指を掴む。
「神にも鬼にも私事情はありますからね。」
合理的で適当な空間だ。
公に交わったらオワリだと言う。
既に公と同じようなもんじゃないかと思うんだけど。
「一生独身なんてツマンナイよ。」
「立場に示しがつきませんし。」
「じゃあ勝手に別居中って設定つくろ。」
ふむ、と考える素振りをして鬼灯は言った。
「それでいいでしょうね。」