高嶺の華








「彼女は高嶺の花だ」と
付き合いの長い老い耄れ神獣が云った。

「若し好機に恵まれたとしても、
僕は彼女に触れられない」と。

私はそれを聞くふりして、
相手の酒に気を配る。
この呑兵衛が。





幼馴染みのひとりに口を零した。
相手の目は見開かれて少しワラッた。

「それなら俺とあいつだってそうだ」
「なんたって幼馴染みなんだから」

「でも」
「お前とあいつはどこか似てるから、」

「違うのかもな」

意味のわからないというふりをして
昔の話を掘り返してやった。
金色の髪は地毛だそうだ。




周りは私らしくないというだろうか
さては彼方はどうなのだろうか




ためらった速歩で行った。
絢爛な街並みはいつもほど目につかなかった。

浅縹の御髪を右に傾けて、
手を頬に添えて笑っている。
今見るとやはり華のような鬼がいた。

いつものように声をかけると
振り返り顔を綻ばせ、
「仕事ですか?」と微笑んだ。

違います、と首を横に振って見やると
不思議そうな顔をして見つめてくる。

会えてよかったと、
熱を持って溜まる物のことを教えてみせたかった。
しかし彼方の目が美しくて
いいえやはり仕事です、と
意味のわからない会話をしてみる。

「今度お茶でもどうですか」
そういって優しく弧を描く口元を確認すると
お暇なときに是非、
と少し会釈をして
柔らかく手を振る彼方に
背を向けて今度はゆっくりと帰った。




提灯は灯り蛇は鳴く
高音の華なら摘み取って仕舞え














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