もし僕が皇帝じゃなかったら。たまに思う事がある。


『サル、今日はどこに行くの?』

「名前」


名前の声。もっと分かりやすく言うと、今日はどこを破壊するの?だ。今ではそれが当たり前のようになりつつあるが冷静に考えてみれば何て恐ろしい事をする子供達だろう………って、それはエルドラドのおじさん達が言っていた言葉か。

僕は服従の態度を見せる名前に今日行くべき場所とプランを見せてやった。そうすれば名前は自分の端末機にデータを送り込んだ後で軽く頭を下げてみせる。


「……それ、やめてくれないかな」

『え?』


そんな誠実で礼儀のある仕草に僕は思わずため息をつかずにはいられなかった。だけどため息をついてしまった所で名前は疑問符を浮かべるだけ。やがて何か自分が無礼でも働いてしまったのかと僕の機嫌窺うように顔を覗き込んでくる。そんな名前に何とも言えぬ脱力感だ。

偉そうに座っている僕に跪く名前。僕の言った事は全部聞き入れてくれる名前の忠実さといったら、まるで主人に仕える執事のようじゃないか。もっと本能的側面で考えるならば主人が大好きな犬?餌が貰えるからと人に懐く猫?前者ならまだいいものの名前の場合後者なのだろう。いや、名前だけに限らずフェーダに属する者は皆そうかもしれない。僕に捨てられたらまた独りぼっちになってしまうんだもんね。まぁ僕はフェーダの皇帝としてそんな事するつもりはないんだけどね。まったく、嫌になっちゃうな。


「なんでもないよ」


そう言って軽くあしらうと名前はまだ不思議そうに、それであってどこか申し訳なさそうに皆の所へと戻っていってしまった。そんな名前の背中を見つめながらまたため息。


ああ本当、皇帝なんかじゃなければなぁ。






序曲と踊る空白
(つまらない)
(つまらない)





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サルの憂鬱。




(130224)



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