多分、私ってすごく分かりやすい性格なんだと思う。気付いたらフェイの事見てるし気付いたらフェイに話しかけてるし。だからマネージャーや他の皆が私に気を使って毎度毎度こんな事をしてくれるんだって、最近になってようやく理解した。


「これフェイに渡しておいてくれ」
「名前ちゃん、これフェイに」
「フェイの忘れ物だ…あ、名前ちょと!」


そして今日もフェイのジャージやスポーツドリンク、さらにはフェイが使っていたタオルと、まるで私がフェイ専属マネージャーであるかの如く次々に頼まれ事をされる。


「今ならフェイの奴ひとりだぞ」


おまけにワンダバにまでそんな事を言われる始末だ。皆から応援されているのは嬉しい事だけどこうも分かりやすく協力されるとフェイ本人にも気付かれちゃうんじゃないかって……ってまぁ皆にフェイの事が好きだって打ち明けた覚えはないんだけど。

とりあえず、皆から任されたフェイのものを渡さなくちゃ。そう思い私はひとりでベンチに腰掛けているフェイの元へ向かった。


『フェイ……って、あれ?』

「あ、名前」


フェイに近付くとフェイは目だけをこちらに向けて私を一瞥してから再び元の場所へと視線を戻す。その視線を追えば目につく救急用品に思わずフェイの足を見た。


『足、怪我したの?』


開いた救急箱。ベンチに散らばっている包帯やらテーピングやらコールドスプレーの数々。ハサミの刃には上手く切れなかったテーピングの一部とぐちゃぐちゃに丸められたそれの残骸。

言ってくれればやるのに。そう言ってフェイの前で準備に入るとすぐさま停止の声がかかった。


「自分で出来るから大丈夫だよ」

『……へぇ?』


何が自分で出来るから、だ。自分で出来ないからテーピングがこんな事になってるんだろうと、少々睨みを利かせてみればフェイは素直に右足を差し出してきた。


「……お願いします」


そうそう、それでいいのに。それから私は慣れた手つきでフェイの足首にテーピングを巻いていった。一度足挫くと癖になるって言うから念入りに。


『──はい、終わったよ』

「ありがとう」


巻き終わった事を告げれば一言お礼を言って靴下を掃き始めるフェイ。……腫れを見た限り軽い捻挫だろうとは思うけど、もしこれが捻挫じゃなくて骨折とかだったらどうするのか。剣城君も大概そうだけどフェイは人を頼らなさすぎる。そりゃあ未来は自分で何もかも出来ちゃうような時代かもしれない。だけどここはマネージャーとして、仲間として、少し位は頼って欲しいなって。それにこれじゃあ私に気を許してくれてないようにも思えるし。


「名前ー!」


思わずため息をつきそうになった時、後ろから私を呼ぶ声がした。

その声に振り向けば両手いっぱいにボールを抱えて走ってくる天馬。だけどその途中で霧野先輩が天馬を止める。こっちを見ながらにやにやしている霧野先輩に何を言われたのか天馬も気を使うように皆の所へ戻って行く。ああもう、何でこんなに分かりやすいかな。フェイが目の前にいるのにこれじゃあまりにも不自然すぎるよ。これじゃあいつフェイにバレてもおかしく……


「ねぇ」

『はっ、はい!?』


いつフェイにバレてもおかしくない。そう思った矢先に突然フェイの声が耳に入り思わず声が上擦ってしまう。おずおずとフェイの方を見ればいつもと変わらない表情に少し好奇心をプラスしたような顔で私を見ていた。それから一言。何の遠慮も躊躇いもない様子で私が今一番恐れていた一言が放たれる。


「名前って僕の事好きなの?」


思わず停止。いや、必然的に静止。フェイから目を逸らしてみてもぐるぐるとその一言だけが頭の中で廻る。今まで考えていた事全てがその言葉によって掻き消される。目の前で私の返事を待っているフェイに何か返さないといけないと分かっているのになかなか言葉が出て来ない。きっとバレた。もう気付かれてる。どうしよう。どうしよう……


『〜…、…好き』


流れる沈黙に耐えきれずつい口をついて出てしまった二文字。言った後に後悔しても遅いんだって事は分かりきっている訳で。私は小さく深呼吸をしてから覚悟を決めて顔を上げた。


『…っ!』








私はどうやら分かりやすい性格らしい。それはここ最近で明白なものとなった。









「そう」











それから、今日初めて知った事。彼もまた、分かりやすい性格らしい。














耳まで赤い君の横顔
(フェイー、うちとパス練するやんね!)
(黄名子ちゃん空気読んで!)






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クールかつ天然なフェイ君を目指した結果。クールな要素があまりないかも(=´-`)何はともあれ黄名子ちゃん可愛い(笑)




(130219)



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