日曜日の朝。
する事が無い私は、折角の日曜日はダラダラと過ごしていた。


『暇。日曜日がこんなに暇なんて……』


以前は部活があろうと無かろうと、学校で自主練をしていた雪村に付き合って、私も学校に行っていたのだが、サッカー禁止令が可決された所為で、私がマネージャーをしていたサッカー部の廃部になってしまった。

雷門が革命を起こし、優勝と共に訪れた管理される事のない、自由なサッカーが出来るようになったばかりだというのに。

サッカーが出来なくなって、ヤル気を出していたサッカー部員達は落胆し、特にサッカー馬鹿の雪村の落ち込み様は凄まじいものだった。
いつもの口喧嘩も無くなり、正直調子が狂うし、見ていられない。
いつもの雪村に戻ってもらいたいが、今回ばかりはな……

最新は吹雪さんに頼もうかと思ったけど、面には出さなくても、サッカーが出来なくなって落ち込んでいるのは吹雪さんも同じ。今の雪村には多分逆効果だろう。


『何処かに雪村を元気にする方法、落ちてないかなぁ?』


あれこれ考えてみても、どれもピンと来ない。それに雪村を元気にするには、やっぱりサッカーしか無いと思う。

でも、サッカーボールや備品は全て処分され、スポーツ用品店にもサッカーボールは置いてないし、グラウンドも今は別の部が使用している。

場所は何とかなるかもしれないが、ボールばかりは……


『………あっ』


ある事を思い出した私は、ベッドから起き上がり、部屋を出た。



******



名前から着信が着て、『どうせ暇してんでしょ?今すぐ学校裏まで来て!』とだけ告げ、一方的に切られた。


「こっちの都合はお構い無しかよ」


悪態を吐きつつも、名前の言うとおり暇な日曜日を過ごしていた俺は、暇潰し気分で学校裏まで来たが、名前はまだ来ていなかった。


「呼び出した張本人が遅刻かよ」


着信の後、俺はすぐ家を出たし、名前の家は学校から結構離れているから仕方ないか。

広場中心にある切り株に腰を下ろし、名前が来るのを待っていると、しばらくして名前が来た。


『雪村っ!』


名前を呼ばれ振り返ると、俺に向け名前が何かを蹴り飛ばしてきた。
反射的に"それ"を蹴り返すと同時に感じた、久し振りの感触。


『ちょっと何処に蹴ってんの!?受け止めなさいよ!』


名前が持つ"それ"に、俺の視線は釘付けになる。
名前が持ってきたのは、廃棄され、もう何処にも無い筈のサッカーボール。


「お前それ……」
『んふふ。やっぱ驚いた。このボール、私とお兄ちゃんが使ってたやつなんだ』


物置に納めてあったのを引っ張り出してきたらしい。
サッカー禁止令が出て以来、ずっと触れる事が出来なかったサッカーボールが今、俺の目の前にある。

名前が蹴ってきたボールを、俺は名前に向けて蹴り返す。するとまた俺に向けボールを蹴ってきたので、そのままパスを繰り返す。
名前の蹴るボールに威力はないが、パスのコントロールは中々上手かった。
久し振りにボールが蹴れた事が嬉しくて、楽しい。
自然と笑みが浮かんでくる。

そのまま俺達は、しばらくパスを続けた。


******



ボールを見た時の雪村の唖然とした顔は見ていて可笑しくて、今にも笑ってしまいそうだった私は、誤魔化すようにボールを蹴れば、雪村はボールを蹴り返してきた。

パスなんて、お兄ちゃんが家を出て以来だから、本当に久しぶりだ。
上手く出来るか心配だったけど、何とか雪村にパスを返す事が出来た。

パスを続けていたら、サッカー禁止令が執行されて以来、ずっと消えていた雪村の顔に笑顔が戻っていた。


(雪村、笑ってる)


最近見ていなかった雪村の楽しそうな顔。
やっぱり雪村を元気にするのはサッカーしかない。


『このボール、あげる』
「えっ?」
『持って帰ってもまた物置に仕舞う事になるし、ちょっと古いけど、それでも良かったらだけど』
「いいのか!?」
『うん。貴重品なんだから見つからないようにしてよ!』
「ありがとな!名前!!」


久しぶりのボールの感覚を確かめるようにリフティングを始めた雪村は、生き生きした表情を浮かべている。

やっぱり雪村は、サッカーをしているのが一番"らしい"よ。












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♪Starry Light♪のニュケ様より。相互の記念でいただきました!雪村君大好きなので嬉しいです(>_<)!!素敵小説ありがとうございました(^^)


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