*少しだけ流血表現
*雪村が病んでる







名前のその目に映るのが俺だけでありますように。最初はそんな小さな願いだった。


『雪村、やめて、やめて…』


好きな人を自分だけのものにしたい。なんてよくある可愛い願いだろ?じりじりと名前を壁に追い込んで頭の形をなぞるように髪の毛を掬いあげると怯えきった瞳が俺を拒絶するかの如くぎゅっと綴じられた。


『やだ…やめてよ雪村…』

「やだ?」


分からない。名前が何で嫌がってるいるのか。好きな人に触れている時ほど幸せな瞬間はないんじゃないかと思う。それは名前だって同じなはずだ。だって俺達は恋人同士、何処にも嫌がる理由がない。むしろ幸せなはずなんだ。それなのに、なんで。

………あ、


「まさかとは思うけど他に好きな奴でも出来たのかよ?」

『違うよ、違う、けど……』


途中で言葉を詰まらせる名前。ああ、そう。そうか。じゃあ何、俺の事が嫌いになった?いや、そんなはずはないか。だって名前の瞳には俺しか映ってない。やっと両想いになれて、やっとその瞳は俺だけを映すためのものになったんだ。


「好きだ名前」


そう言って名前のおでこにキスをする。おでこ、ほっぺ、唇。順番に優しいキスを落としてからゆっくりとシャツのボタンを外していけばびくりと名前の体が跳ねた。それから露わになっていく無数の痕を撫でる。時間が経って青くなったもの、途中経過で赤くなっているもの、昨日つけたものには瘡蓋が出来ていたりもした。そんな痛々しい痕を見て俺は満足するのだ。


「大好きだ」

『…い゛、っ』


名前の胸元に歯を立てる。そうすれば柔らかな肌から温かい血液が溢れ、俺の口の中に鉄の味が広がる。吸血鬼でもあるまいし、これは血が飲みたい故の行動ではない。何時までも消えない俺の印を残したかっただけ。俺はまだ肌に滲んでいる名前の血を舐めとってから再び名前にキスをした。名前は自分の鉄の味に顔を歪ませながら俺の舌を受け入れていく。

好き、大好き、愛してる。だからこそ俺は名前を独り占めしたい。可愛い願いなんだ。何も恐れる事なんかないはずなのに、


「は…」

『っ、…』


唇を離した後の名前の顔は恐怖で引きつっていた。悲哀、怒気、落胆、そのどれでもない、絶望に満ちた顔。瞳は俺ではない窓に映る何かを見つめて決して逸らそうとしない。いや、逸らそうとしないんじゃなくて逸らせない、そんな様子だった。

……ああそうか。名前には見えてたんだな、これ。でも大丈夫。もし名前が俺意外の奴を好きになったなんて言った時の為にいつも持ってるだけだからさ。信じてるけど、もしもの為。だから、そんなに怖がる必要なんてないんだ。

だって名前が俺意外の奴を好きになるなんてあり得ないから。


「なあ、俺の事好き?」


そういって微笑みかければ名前は俺の手に握られたナイフから俺に視線を移して歪んだ笑顔を浮かべた。










『大好きだよ』










「それでいいんだ」と、自嘲。
(小さな願い事の種はみるみるうちに汚物を孕んで真っ黒な薔薇を咲かすだろう)
(本来の花の色も知らずに)





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碧ちゃんに捧げます!ヤンデレ、頑張ったけどもお気に召しましたでしょうか?(笑)もっとグロくても良かったかなぁ…とか、色々あるけど、どうぞ貰ってくだせぇ(//´ё`)ノ

相互ありがとう!これからもよろしくね(^^)



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