クリスマスの日。僕はコンビニで買った肉まんを頬張りながら名前の家へと向かった。僕がクリスマスを誰かと祝った事がないって言ったらじゃあ家においでよって。成り行きで来てしまったはいいものの、インターフォンを押すのに躊躇う。だって女の子の家に上がるのって初めてだし、ほら、クリスマスなんてロマンチックな日に彼女の家に行くって言ったらする事なんて………


『フェイ?』

「うわあっ!?」


考え事をしていた所急に降ってきた声に上を見上げれば二階から名前が顔を覗かせていた。それからぴらぴらと手を振って中に入るように指示をする。僕は詰まりそうになっていた肉まんを飲み込み最後のひと口を放った。


「おじゃましま…」

『メリークリスマ───ス!!』

「わっ!!」


ガチャリ。恐る恐るドアを開けてみれば パン、と大きな音を立てて目の前に紙吹雪が舞った。クラッカー?名前の手にはそれらしきものが握られている。どきどきする心臓を抑えながらもゆっくりと案内された部屋を見渡す。モールやら丸い玉やらで煌びやかに飾られているクリスマスツリー。部屋の壁一面もキラキラに装飾されていた。


「すごい……」


思わず詠嘆の言葉を漏らせば名前が嬉しそうに笑う。それから僕の手に持っていた物を見て不思議そうに首を傾けた。


「あ、これ名前に」

『なにこれ?』

「肉まん」

『クリスマスに肉まんって』


言われると思ったけど僕も肉まん食べたかったんだよしょうがないだろ。僕はクスクスと笑う名前の前に黙って肉まんの入った袋を差し出した。その肉まんからまだ湯気が出てるのは僕が名前の家まで走ってきた証拠。案外僕は今日の事を楽しみにしていたわけで。プレゼント用意しておいた方がいいかななんて思ったけどこの時代の流行りなんて分からないし今度じっくりと選ぶとして、今日はとりあえずの肉まん。でも、クリスマスなんてロマンチックな日に彼女の部屋でする事……なんてさっきは変な妄想していたくせにそんなムードもクリスマスもぶち壊しの物を持ってきた自分に今更ながら少しだけ恥ずかしくなる。


『じゃあ、そこ座って』


そんな僕には気付いていないのか名前はせかせかと僕を定位置に座らせた。それからいきなり暗くなった部屋に、何が始まるのかと思えば甘い匂いが鼻につく。カチッカチッと名前がライターでキャンドルに火を灯して、気が付けば目の前には美味しそうなケーキが用意されていた。


『クリスマスにあんまりいい思い出がないみたいだったから、その…』

「あ…」


……そっか。名前も知ってたんだね、僕の過去。少し言いにくそうに顔を俯けてしまった名前だけど、僕は何だか嬉しくなった。だって名前は僕にクリスマスを楽しんでもらおうとしてたんだよね。いや、もしそうじゃなかったとしても僕は凄く嬉しかった。


『……フェイ?』


僕は名前をぎゅっと抱き寄せた。きっとこの不格好な切り方のイチゴが飾られたケーキだって名前の手作りだ。クリスマスツリーだって部屋の飾り付けだって、僕の為にって思うとさ、すごく嬉しいよやっぱり。


「肉まんなんかでごめんね」

『え?』

「僕も名前に喜んでもらいたいのに……」


流行りの物じゃなくても何か名前に似合うプレゼント買ってくれば良かった。だけど名前は優しいから、僕の肩で優しく微笑んでくれる。


『じゃあ……もっとフェイが欲しい』


だけど次の瞬間、名前の口から予想外の言葉が飛び出した。

………僕が欲しい。確かにそう言った。一瞬固まってしまったけど、僕も男。それに現に僕の方こそそんな事を考えていたりしたわけだし。どうすればいいのかと行き場の無くなった手を宙で行ったり来たりさせてみるけど、ここは思い切って名前を押し倒すことにした。


「家族の人、帰って来ないよね?」


名前を床に組み敷いて問えば少しの間を開けてからゆっくりと頷く。恥ずかしいのか僕と目を合わせようとしない名前だけど、誘ったのは名前だ。頷いたって事は………いいんだよね?

僕はペロリと名前の唇を舐めた。最初は遠慮がちに、名前の顔色を伺いながら何度も口付けを落として。それは次第にくちゅくちゅと水音が立つ位の激しいキスへと変わっていった。


『ふ…ぅ、』

「ん……はっ」


僕だってそういう経験があるわけじゃないからどこがいいのかなんて分からない。だけどなるべく名前が怖くないようにゆっくりと愛撫を進めていけば、段々と名前の表情に恍惚の色が浮かんでくる。

キャンドルの灯りだけじゃよく見えないけど、垂れ下がった眉と、赤く上気した頬。そんな名前の姿を見ていたら僕もそろそろ自我が効かなくなってしまいそうだ。


「力抜いてて…っ」

『あっ!あ…、〜』


ずぷずぷと僕のモノが名前のナカに埋まっていく。丁寧に慣らしたお陰か名前もすっかり刺激に敏感になっているみたいで、何度か律動を繰り返せば甘い声が漏れ始める。

僕のクリスマスには嫌な思い出しかなかった。寒くて、悲しくて、寂しくて。だけど今年のクリスマスは違う。暖かくて、心地良くて、幸せ。名前と一緒に過ごす時間はいつだってそうだ。不思議だね。


「名前…っ、すき」

『んっ、私…も、っ』

「好き…だ、よ」

『も…っ何回言って…、ぁ…───っ』


本当、不思議だ。もしかしてこの言葉も幸せになるための呪文なのかな、なんて思ったりするんだ。だからね名前。そんな事言わないで、何回でも言わせて。










「大好きだよ…───っ」












メリークリスマス、大好きな君へ。
(僕からのプレゼントは君への愛)
(なんてね)





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メリークリスマス!こっそりフリーです。



(121225)



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