ちくたく秒針音
ネジを巻いたのは君
かちこち歯車音
動かしたのは君
とくとく心臓音
高鳴らせるのは君
「タクト」
音が響く。低い音が心地好くメロディーを奏でる。
ひとつ秒針がまた進む。
「タクト」
音が弾ける。一定のリズムを刻んで鼓膜を、脳を、身体を震わせる。
ひとつ歯車がまた回る。
「聞いてる?」
「呼んでよ。」
「…は?」
「もっと僕を呼んで、」
その音で何度も呼んで。
飽きるくらい呼んで。
その音が心地いいんだ。
その音が好きなんだ。
少し間が空いてから、
紡ぐ音が染み渡ると同時に身体が温かさに包まれる。
耳から直接入る音は少し刺激が強かった。
続くクスリ、と笑う音、スピーカーが壊れそう。
「好きだよ、タクト」
ひとつ心臓がまた拍動する
甘音
降り注ぐ音で満ちていく世界
音に溺れるのも悪くないと思った