死と生







私は、高校生だった。



偏差値もそこそこの学校。
両親とも弟とも仲が良い。

オタク趣味な所も、同じような友人たちが出来たことで
話も膨らみ、それなりに充実していた。

最近は、個人が出しているパソコン用フリーソフトにハマっていた。
中でも、「冠を持つ神の手」というゲームを
友達に広め回ったりしていた。

充実していた。
毎日が楽しく、馬鹿な話を友達に聞かせて、
親孝行なんて先の話と、遊んで遊んで。


そして。
車にひかれた。


急に目の前に影が出来て、ドンっと車体に押されたように思う。
空がゆっくり見えて、とても綺麗だった。

沢山の人の声が段々と遠ざかって。
何をそんなに騒いでいるのかと思ったりもした。
遠ざかる意識の中、沢山の思い出が通り過ぎ、瞼を閉じた。



目を醒めた瞬間、そこは違う景色だった。



自由にならない手足。
動くこともままならない体。
見たことも無い女の人。


どれ程、強くひかれたのかと、恐ろしくなった。
半身不随だろうか。
女性は、看護士さんにしては、変わった格好をしている。
そう思った。


私は、生まれ変わった。
私は、一度死んだのだ。



そう理解出来るようになるまで、半年以上。
ここはどこだ。
いつになったら退院出来るのだと、混乱しつづけた。




私は、手のかかる赤ん坊だっただろうと思う。


赤ん坊として、新たに生を受けたのだと知るまで
私は、お母さんに、お父さんに、弟に会わせてくれと泣き叫んだ。


もちろん、言葉は言えない。
だぁ!、だの、あー!、だのと叫ぶだけだ。
訳が分からず、余計イラつき、手近な物を投げたりもした。


言葉が喋れないことが、幸いしたのだろう。


女性は、赤ん坊特有のぐずりだと思ったという。
のちに、お前は赤ん坊のころ、良く泣く子だったと。


女性は、どこか困った顔で、
それでも一生懸命あやし、子守唄を歌ってくれた。



御母さん。
厳しく、優しく、そして、強くありなさいと
笑う彼女をそう呼ぶようになった。


私は、受け入れた。
新たな生を。
この地で生きることを。


このグラドネ―ラに。
微を持つ、二人目の寵愛者として。






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