思い思いの仮装をした子供達が広場に集まってくるのを嵐騎士は微笑ましく眺めていた。
サビロニアを破って日の浅いブリティスでは今だ残党への警戒を怠っておらず、ハロウィンのこの日も子供達の安全を考慮して円卓の騎士から数名が各地域の子供達を引率する事になっていた。
勿論嵐騎士も動きを妨げない程度に仮装して子供達と馴染んでいる。

「皆揃ったかな?じゃあそろそろ…」

「すまない、遅くなった」

点呼をとって出発、と言うところに仮装をした大人が現れた。
頭のてっぺんから足の先まで見事なまでに…

「チキンゾックに知り合いは居ない筈だが」

嵐騎士が剣の柄に手をかけるとチキンゾックは慌てて両手羽を振った。

「俺だ、マークII、一緒に廻る事になっていただろう」

「その声は…兄さん?…なんですかその格好は…」

兄のあんまりな出で立ちに脱力しながらも、嵐騎士は気を取り直して任務についた。

子供達を連れての行軍は実に和やかに運んだ。
仮装のせいか闇騎士がいつになく子供に絡まれているが、特に問題もなく、寧ろ進んで小さい子を背中に乗せたりあやしたりしているのが微笑ましかった。

夜も更けお菓子を両手に抱えた子供達を各家庭に送り届け、後は城に戻るだけとなった時だった。

「もう、おしまいか…」

やけに寂しそうに闇騎士が呟いた。
チキンゾックの背中が少し肩を落としているように見える。

「その仮装じゃ兄さんも疲れたでしょう、帰ったらこのお菓子でお茶にしませんか?」

戦利品のお菓子を見せて微笑みかけると着ぐるみの中で顔の見えない兄が微かに笑った気がした。

「…用事を思い出した、先に戻っていてくれ」

「はい、それじゃあ後で」

踵を返して数歩進むと不意に後ろから声をかけられた。

「マークII」

「はい?」

「…立派に、なったな」

振り向くともうそこには誰も居なかった。


城に戻ると執務室で書類整理に追われる闇騎士の姿があった。

「兄さん、どうしてここに?」

「どうしても何も今日は内番だ」

「おかしいな、じゃああのチキンゾックは一体…」

「? それはそうと手を貸してくれないか」

今日中に帰れそうに無いんだ、と闇騎士は苦笑した。





















やさしいいたずら









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2015年のハロウィンにTwitter上で公開したもの。
ハロウィンはお盆みたいなもんだと聞いたので(実はよく知らない)


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