1 突然の告白





デュエルアカデミア。ここは孤島に在るデュエリスト養成学校である。
そんな学校のカイザーと呼ばれる男、丸藤亮先輩に呼び出された私は、大人しく彼の背中についていく。
目的の場所なのか、人気のないラウンジへと到着すると足をとめる。


「呼び出してすまなかった」
「あ、いえ」

私を振り返った先輩は学校でも人気のトップ3に位置するイケメン。順位はいまいちわからないけれど、そのトップ3には藤原優介先輩と、天上院吹雪先輩がいて、この三人は顔だけでなくデュエルも強い。だから女生徒には憧れの存在だ。
そんな先輩と私には接点なんてものはなく、初めて話したも同然。だから呼び出される理由がよくわかっていないのだが。しかし先輩の言葉を断るわけにもいかず、話を聞こうと呼び出しに応じ、ついてきた。

もしかしたら気付かぬうちに先輩の気に障ることをしていたのかもしれない。ああほら、足が太いんだからそんなに醜い足を出すな、みたいな?それはそれで言われたら傷つくが、そういう系のことかもしれない。
成績も並で、あまり目立たないように生活しているけれどたまたま先輩の目に止まってしまったのかもしれないし。


「突然なんだが、俺と付き合ってくれないか」


ほ、本当突然だな。藤原先輩や吹雪先輩とはいけないところなのだろうか。いや、接点のない後輩といくところなんてそれ以上にないだろう。しかも今まさに先輩に付き合ってラウンジまで付き合っているわけで。

「え、っと…どこに付き合えばいいでしょう?」

長期休みも終わり、新学期が始まったばかりというのだからこのアカデミア内だろう。わざわざ先輩が後輩を呼びつける目的の場所、なんてあっただろうか。それともあれか、デュエルに付き合えといっているのだろうか。それなら私よりも成績がいい子を指名した方が楽しめると思うのだが。
返事をした私に、先輩は目を見開く。何かを喋ろうと口を開けるが、その口は言葉を紡がずに閉じられた。口元に手を持っていき悩む仕草を向ける。もしかして付き合う場所を考えていなかった、とか?そんなわけないだろう。
目を伏せたのは一瞬、すぐに目を開けて私を見た先輩の瞳はきらきらと揺れていた。


「…いや、言い方が悪かったか」
「え?」
「お前のことが、すき、だ。だから俺と付き合ってほしい」


先輩が、私を…すき?
いや待って。接点も何もなかった丸藤先輩が、私を好き!?デュエルも成績も並みな私を丸藤先輩が!?いやいやいやいやあり得ない。絶対これ何かの罰ゲームでしょう。それ以外に私に、なんてありえないありえない。
それかこれは私の夢だ。果てしなく馬鹿な私の夢に違いない。そうして自分の頬を抓るが、そこには痛みが広がるだけだった。
うそ、夢じゃない。じゃあこれは丸藤先輩の罰ゲーム、そう罰ゲーム、きっとそうだ。

そうして丸藤先輩を盗み見るが、真剣なまなざしで私を見ていて見つめ返せない。なんだあのイケメンオーラは…!しかも若干の頬の赤みで普段の凛々しい先輩からは想像ができない可愛さがにじみ出ている。くそ、可愛さも兼ね備えたイケメンだと。
…え、頬が赤く、なって、る?
しかも口元を手で押さえて、私と目があった瞬間に逸らすとか。どんな乙女ですか。
これはもしかしなくても、本当な感じでしょうか。

いやもっと考えよう。たとえば丸藤先輩が吹雪先輩に罰ゲームと称して一般生徒に告白して来いと言ったとして、真剣に告白してきてもおかしくはない。というか冗談の雰囲気を真面目な丸藤先輩が演じられるだろうか。絶対無理だ。
だからこうして嘘の気持ちでも“すきだ”と口にして恥ずかしくて赤くなっているということもありうるわけで。



『雨宮伊織はいるか』


ふと…教室に丸藤先輩が現れた時を思い出した。
丸藤先輩は私を呼ぶ時、しっかり私の名字と名前を―――雨宮伊織という名を呼んだではないか。吹雪先輩が指定したならまだしも、いきなりの罰ゲームで接点もない生徒の名を記憶しているなんてことはないだろう。
だったら先輩の告白は、真剣に考えて返事をしないといけないのかも。

というかさっきの私の受け答えは凄く昔のボケみたいなものだ。うわ、恥ずかしい!思いだしたくない!
ま、まずは返事をしないと。いつまでも黙って先輩を待たせるわけにもいかない。
なんだろう、なんて返事をすればいいだろう。
私もすきです?―――確かにカイザーのファン、といったらファンではあるけれど、そこまで熱狂的でもなかったし。すき、なんて気持ちまで届いてはいない。ごめんなさい、というまでも嫌いな筈はないし。むしろ“すき”という感情よりも“憧れ”の感情の方が強い。

落ち着け落ち着け。とりあえず突然のことだったのでお時間を頂けませんか。よし、これだ。これでまず今の状況を乗り越えよう。
そう意気込んで先輩を向けば、先輩は顔を未だに赤くしている。貴重なシーンを目に焼き付けておかねば。赤い顔に普段見れない恥ずかしがる表情、そして頭でぴょこぴょこ動いている耳に、…ぴく、と動くふわふわの毛に覆われた、耳…?



「って、耳ぃーーーー!?」


動物の様な耳を生やした先輩。しかも後ろからは揺れる尻尾がこちらを覗いていた。




ついにやってしまった半獣パラレル。
亮さんです。よろしくお願いします。
13.02.03.
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