Please warm it!



白く吐く息に冬の寒さを感じる。
いや、むしろ制服から露出している部分が感覚がないことの方が寒さをしみじみ感じているかもしれない。

「ううーっ 寒い!」

急いで家を出てきた為に手袋を忘れてきた。コートの中、セーターの中と手を隠していくが、空気が入ってくるためあまり意味がない。

「大丈夫?貸そうか?」
「だ、大丈夫じゃないけど、静香が寒くなっちゃうから」
「祐菜のそんな寒そうな手みてるのがつらいよ」

だからほら、と手袋を外そうとする静香。慌てて止めようと手を伸ばせば後ろから二人を呼ぶ声。

「川井ー、祐菜ー」

振り向いた先には京介がマフラーに顔を埋めて歩いてきていた。後ろには遊星くんやアキちゃんたちも。
京介の水色の髪は見ているだけで寒さを増す。

「おーどうした?」
「手袋忘れたー」
「バッカだな!すっげー寒ぃじゃねーか」
「うっさい!」

京介だって寒さで鼻赤くしてるくせに!クロウくんなんか耳当てしてるよ、暖かそう。

「なんだ。本当に寒そうだな、手」


じっと見つめられるのは寒さで感覚を失った手。指先なんか寒さで白くなっている。ぎこちない動きしかできないから、出来ればあんまり見てほしくないんだけど。
京介を睨んで静かに主張していると何を勘違いしたのか、憎めない笑顔を浮かべて手を伸ばしてきた。冷たい手に京介の温かい手が触れる。その部分がじわり、熱を帯び始める。
まさか手を触れられると思ってもみなかった私は京介の行動に驚く。何も反応できぬまま手を引かれ、冷たい私の手は京介の頬へと導かれた。

「う、っわ、ちべてー!」
「ッ!」
「ほんっとに冷てえ…馬鹿だなお前」
「あ、ああ、あんたに言われたくない!」
「なんだよ。あったかいだろ?俺」

温かい京介の手と、マフラーに外気を遮られていた部分の頬に挟まれた私の手は段々と熱を帯びていく。両手がそうされているために何もできないし、この温かさから自ら手を引くのも惜しい気がする。
でもこの状況はとても恥ずかしい!

「祐菜?どうした?」
「〜〜〜っ!!」
「熱でもあるのか?」
「っあんたが!手なんか握るからでしょ!馬鹿京介ー!!」

ありったけの力を込めて京介の脛を蹴れば、ガツッと鈍い音を立てた。
それでも離れない(むしろ痛みで強く握り返された)手に、何故だか心臓のバクバクが止まらなかったのは内緒の話。



「…鬼柳、何してるんだ」
「う…お、遊星…祐菜にやられた」
「祐菜さんに手を出したからだろう」

「わあ、祐菜よかったね」
「よよよよくないよくない!」
「うふふ。でも顔真っ赤だよ。よかったね、暖かくしてもらえて」

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とてつもなく寒くて手先がしにそうだったので。普通にやりそうなのは鬼柳かなあ、と。
やってもらいたいー!
初出:12.12.13.