会い


(設定より一年前、祐菜ちゃんの入学時のお話です)



今日から高校生。新しい生活に胸を躍らせながらの新入生が大勢いる。入学式も終わり、クラスに戻って隣近所なんかで新しく友人を作り始めていた。
先ほど終わった自己紹介もあり、仲良くなれそうなクラスメートに話しかけているのと、中学からの知り合い同士で話している風景が見られる。

そんな中、祐菜も勇気をだして声をかけることにした。
目の前の金髪美女に!


「あの、天上院さん」
「え?あ、えーっと」
「武藤です、武藤祐菜。よろしくお願いします」
「武藤さんね、よろしく」

差し出された手を祐菜は一拍置いて握る。
そのまま近くにいた遊城十代、丸藤翔、万丈目準にも挨拶をし、会話の輪に入れてもらった。

「ところで、なんで明日香に話しかけたんだ?」
「あ、それ聞いちゃう?」
「ダメか?」
「ダメじゃないけど…まあ理由っていうなら、」

祐菜の続く言葉に耳を傾ける4人。

「金髪美女…!」

その言葉にずるっとスベったのは明日香と翔。

「武藤さんも髪の色、赤いじゃない」
「違うの!金髪っていう一種のブランドなの!ブランドってだけで価値が全然違うのっ 天上院さんもっと自分の魅力わかろう!!」
「そ、そう言われても…」

明日香は近くにいた十代や翔に視線で助けを求めるが、なんと言葉で返したらいいか分からずに黙ったままだ。


「金髪はブランドの中の最高級…しかも美女なんてその上に位置するんだよ!」
「言い過ぎよ!」
「いいや、むしろ言い足りない!」
「貴様、わかるな!」
「万丈目くんもそう思う?」

万丈目は祐菜と気が合うとわかったのか、祐菜と共に目を輝かせる。
ああ、変なコンビが出来てしまう、と明日香と翔は頭を抱えた。十代は特に気にした様子はなかったが。


「明日香ー?」

と、5人で固まって話していると、教室の扉から明日香の名を呼ぶ声がした。万丈目と翔がそれに気付き、扉の向こうに立っている見知った3人の先輩に手招きをした。
後ろを向いて気付かない祐菜は明日香を指差し、興奮した面持ちで口を開く。

「金髪、美女、しかも胸がデカくて腰回りもいい感じとか!子供産んでほしい!」
「えーっと、何の話かな?」
「うわっ!!」
「兄さん!」

兄さん――明日香の兄である吹雪が祐菜の後ろからひょいっと顔を出して会話に入る。登場に驚いた祐菜は後ろを振り返り、その存在を確かめた。

「見ない顔だね、明日香たちの新しい友達かな」
「え、あっ はい」
「吹雪さん、こんにちは、カイザーと藤原さんも!」

十代が吹雪を含め後ろの2人にも挨拶をしたことにより、祐菜も後の2人を認識した。
明日香の兄である吹雪、翔の兄であるカイザー…亮、そして藤原優介をそれぞれ紹介してもらい、祐菜も挨拶をする。3人は一つ上の学年で、4人とは知り合い。新入生の様子を見に来たらしい。

「あれ、イケメン!とは騒がないんだな、お前」
「え?あー…格好いいね」
「もっと騒ぐかと思ったのに」
「あ、いや、イケメンだと思うよ。でもなんつーか、その、周りに結構イケメンがいると慣れるっつーか感覚が麻痺するって言うか」

金髪美女には過剰に反応したのにと十代が疑問に思ったことを伝える。そういうからには中学時代、この3人はモテたのだろう。
新入生の様子を見にきた、兄として先輩として、やはり心配なのだろう。そう思うと同時に小さい頃からよく共にいる一つ上のイケメンたちを思い浮かべた時だ。


「祐菜…!やっと見つけたぜ!」
「げっ」

3人の入ってきた扉から姿を現したのは髪が派手におっ立ち、つり目が目立つ生徒。勢いに任せて祐菜に一直線に飛んできた。
が、簡単にさせるものかと祐菜はその身体を腕と足で押さえ、距離をとっている。駆けてきた生徒の方も負けじと祐菜に抱きつこうと、肩を掴んで必死だ。

「ちょ…っと、アテム…、っ、こういう防御戦は…家以外でやらないって、っ言った…よね…っ!」
「お前がクラスを教えないのが、悪いだろ…っ」
「こうなるからっ やだったんだって…ば!」

2人の睨み合いはそのまま7人の前で繰り広げられる。しかし足を使って(上げて)防御するのはスカートの女子にとって如何なものか。
再び教室の扉の方から声がした。2人は格闘しながらも扉の方へ目を向ければ、そこにはずいぶんと見知った顔がのぞいていた。

「祐菜ー大丈夫ー?」
「遊戯!もう、ちゃんとアテム見張っといてよ」
「ごめんごめん、勢いよくて」
「杏子や相棒は知ってたのに俺だけ仲間外れ…」
「城之内くんにも教えてないけど」

遊戯も含めアテムを責める祐菜。ツンツン頭が2人揃ったその光景に、十代たちは口を挟めずにいた。


「…で、キミは結局、どちらと恋人同士なの?」
「えっ はあっ 恋人!?」

アテムの頬を遠慮なく引っ張る祐菜に、聞きたくて仕方がなかった吹雪は祐菜に問う。突然の問いに驚いた祐菜は年上である吹雪にも関わらず崩れた口調のまま声を発してしまう。
いやいやこれは違くてですね!
2人との仲をちゃんと説明しようとアテムの頬を引きながら詰め寄る。改めてみるとイケメンだなあ、と思いながら先輩3人をみると…


「見つけたぜ、祐菜!」
「こんにちは、ここのクラスだったんだね〜」
「了くん!…に、バクラくん」

「あ、なんかまた増えた」と思った十代は思わず口に出している。祐菜も出てきた人物に良くない表情を明らかに示した。

「なんだその反応…俺様に会えて嬉しくねーのかよ」
「うれひいですうれひいです!」

背の高い白銀色の髪の2人、目つきの鋭い方が祐菜の頬をつねる。その衝動でアテムの頬をやっと離した。

「あ、遊戯…やっぱり祐菜のところにいたんだね」
「探したじぇ。祐菜はこのクラスかあ?」
「マリクくん、マリちゃん!たすけてー」



(なんだかどんどん人数が)
(武藤さん、そろそろ…)
(((はい?!)))
(…え?)

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最後の最後に武藤で三人反応する、と。
設定一年前のお話です。これからGX組と仲良くなっていきます。
祐菜ちゃんは最初から明日香の魅力に…(ゾッコンです)。
初出:12.12.02.