ップルと絡んでみる



いつも通りバクラくんとの追いかけっこが始まろうとしていたが、今日は早々に捕まってしまった。頭をぐりぐりと乱暴に撫でられ、せっかくセットをした髪をぐちゃぐちゃにする。ああ、もう!バクラくんの意地悪!昔からのじゃれあいに慣れてしまっているけれど。
そんなじゃれあいに向かって歩いてくる二つの影。


「あ、海馬くん!キサラさん!」

背筋を伸ばし歩く海馬くんはいつも通りビシッと決めている。キサラさんは綺麗な髪をなびかせて歩いており、見とれてしまう。
海馬くんの後ろを健気についていくキサラさん。キサラさんを気遣って歩む足の速度はそこまで速くない。ああ、外見は理想的なカップルだなあ。


「ああ、祐菜か。またバクラと何ぞ遊んでおって」
「うー そんなつもりはないんだよ」
「ふふ。おはようございます、祐菜」
「おはようございます、キサラさん!」

と、海馬くん、キサラさんは私声かけに立ち止まってくれた。バクラくんは海馬くんと極力関わりたくないのか、私の頭を解放して後ろに控えている。若干海馬くんと睨みあってるのは気付かないふり。

「キサラさん、海馬くんといい感じですか?」
「えっ えっと、その」
「おい祐菜、変なことをキサラに聞くな」

バクラくんと睨みあったままの海馬くんは声だけ私に向ける。視線はいまだバクラくんに向いたまま、だ。

「俺とキサラの関係性が崩れるとでも」
「そうやって自信に満ち溢れてること言ってばっかりだから、崩れる可能性があるんじゃん」
「なっ」
「ね、キサラさん」
「瀬戸さまはお優しいですよ」
「キサラさんがそうやって海馬くんを甘やかすからー」
「人の恋愛事情に首突っ込んでんな」
「あだっ」


海馬くんはバクラくんとの睨みあいをいつの間にか終了していたようで、今度は私の言葉に固まっている。そういう海馬くんの俺様なところ、どうなの。
とも思ったが、バクラくんに軽いゲンコツをもらったのでその話題を終わりにする。バクラくんのゲンコツは回数を増すごとに痛くなっていくから二回目からは要注意だ。ちなみに一回目はそんなに痛くないけど、反射的に痛いと言ってしまうもの。あと万が一のために痛いと言っておかないと、二回目が桁違いに痛くなるのを防ぐため。

ゲンコツが当たった場所をさすりながら固まっている海馬くんの裾をつんつんと引く。キサラさんも一緒にやったため、無事現実にご帰還された。
ふん、と鼻を鳴らすも、動揺が明らか。
俺様で傲慢に近い海馬くんだけど、そんなところは年相応で、海馬くんらしいなあなんて感じる。


「ねえ、また遊びいってもいい?」
「構わん」
「人数増えたんだけど」
「…新入生分か」
「あたり!さすが海馬くん、冴えてるー」

毎回、遊ぶ場所を提供してくれている海馬くんには感謝だ。まあ海馬くんのお家大きいし、部屋を使わないより使った方がマシだろうという余計なお世話な理由が根底にあるけど。それにあの大人数で遊ぶと言ったら場所は限られる。そう考えたら、大抵のものが揃っている海馬くんのお家は適所というわけで。
ちなみに幼なじみなので、バクラくんやお兄ちゃん達含めた幼馴染集団は海馬くんのお家なんて数えられないくらい訪問している。
去年からは十代や藤原先輩たちも加わったから、余計に海馬くんのお家しかなくなった。今年はまた遊星くんたちも増えた訳だし。


「まあ祐菜には色々と借りがあるからな」
「それを言うなら私もなんだけど」
「俺がいいと言ってるんだ」

ぐしゃっと海馬くんに撫でられる。背が高いから反抗できないのが悔しい。
しまいにはキサラさんまで私の頭を撫でてきた。ふふ、と微笑み、周りに花を飛ばしながらぽんぽんとされる。なんだこの人、可愛いな…!そんなキサラさんには大人しく撫でられていた私。ふふ、キサラさんが嬉しそうにしてるからいいや。

「おい、行くぞ」
「あっ バクラくん!」

と、突然腕を引かれる。キサラさんの撫で撫では名残惜しくもバクラくんに引っ張られたので仕方なく離れていく。

「今日お昼一緒に食べようねー!」
「気が向いたらいく」
「はい、是非伺います」


噛み合わない返事に「まってますー」と言いながらバクラくんに引っ張られる。
ああ、もう。性格なんかを知っていると、本当なんであの二人がカップルなのか不思議なんだよな。って、お互い無意識に溺愛なんだから仕方ないか。外見はお似合いだから余計に心配だよ。主に海馬くんのツンデレな態度とかツンデレな態度とかツンデレな態度とか。


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やっと書いた二人。す、すみませ…
海馬くんとのお話はまた別に。
13.02.03.