シンドバッドは約束通りアラジンとモルジアナを食事に誘っていた。後ろにはジャーファル、マスルール、エリニカを控えて。
バルバッド名物のエウメラ鯛のバター焼きがテーブルに運ばれ、二人は料理にくぎ付けだ。シンドバッドがエウメラ鯛の説明をしてから手をつける。口にあったのか、二人は無言でむしゃむしゃと食べていた。

「そういえば、部下の紹介がまだだったな。部下のジャーファルと、マスルール。それとおまけのエリニカだ」
「おまけは失礼です!」
「はは、悪い悪い」

紹介の仕方に思わず口をはさんだエリニカは、口を尖らせたまま言葉は続けない。その仕草もすぐに消し、アラジンとモルジアナに笑みを向けた。アラジンはエリニカに笑みで返し、モルジアナは小さく頭を下げる。

「そうだ、モルジアナ!マスルールはな、「ファナリス」なのだよ」
「!」

“ファナリス”という単語だろう、モルジアナはシンドバッドの言葉に驚きを隠せない。


「…どうも」
「…どうも……」

マスルールはじっと見つめているが、モルジアナは視線を逸らし頭を下げる。そんなぎこちない二人に口元が緩んだ。
目元がマスルールと本当に似ている、と感じた。シンドバッドもそこが決めてだったのda
ろうか、エリニカと目が合うとふ、と笑う。



「ぼくはね、アラジンだよ!」

モルジアナの腕を引き、マスルールの腕を掴む小さいアラジン。同じファナリスとして仲良くさせたいのだろう行動に小さく笑う。
マスルールさんはあまり積極的にしゃべる人じゃないから困っているなあ、と横目で盗み見た。モルジアナを見れば彼女もアラジンの行動に焦っているらしい。

「二人とも、そんなに緊張なさらなくても」
「そうだよ、仲良くしようよ、ね!」
「あ、はい…」
「………」

無口なマスルールに、モルジアナも同じく無口なのだと感じた。アラジンはそれをカバーするように会話をする。エリニカも同様、サポートをするつもりであるが最初から苦戦する気満々でならない。

「そういえばおねえさん、綺麗な髪だねえ」
「ありがとう。褒めてくれて嬉しい」
「光にあたってキラキラしてるよ!ね、モルさん」
「は、はい。キラキラ、してます」
「そういうあなたも…ええと、モルジアナさんも綺麗な赤毛です。さすが同族、と言ったところでしょうか」

といい、エリニカがちらりとマスルールをみる。モルジアナを気にしているようだが何も言わないのはマスルールだからだろうか。


「モルさんと同じ暗黒大陸の人なんだよね?すごく大きいね!モルさんもこんなに大きくなるのかな」
「ど、どうなんでしょう」
「でも、ウーゴくん程じゃないよね」
「ウーゴくん?」
「そうだ、紹介するよ!僕の友達」


そうしてアラジンが首にかけている笛を吹けば、そこから飛び出してきたのは青い色をした大きな腕だった。
同時にジャーファルがお茶を噴く。そうして腕の存在に気付いたシンドバッドの驚いた声が響いた。







場所を移動し、人目に付かないところで青い巨人と向かい合うシンドバッド。顔はないが、先ほどの腕だけではなく顔以外の全身を出現させている。
アラジンから伝えられた真実にシンドバッドは驚きを隠せなかった。


「アラジン…君も“マギ”なのか…!?」
「君“も”?おじさん、他にも“マギ”を知っているのかい?」
「ああ…知っているとも。別に仲良しというワケではないがね…」
「…?」

墓穴を掘った、と確信する。が、そこは動揺などを見せるシンドバッドではない。

「おじさんって、一体何者なの?」
「そうか…君が“マギ”なら明かそう。今まで隠していて悪かったね」

真実を伝えるつもりなのだろう。目を伏せ、胸に手を当て、冷静さを持って口を開く。その堂々とした姿は自慢の主そのものだ。


「俺は…“シンドバッド”さ」


きょとんとした表情のアラジンはシンドバッドの名がよくわかっていない様子。
まさかの事態にジャーファルも苦い顔をしてアラジンを見る。

「えっ!?し、知らないの?」
「どこかで聞いた…ような気はするよ…?わすれちゃった……」
「思い出してごらんよ!!“シンドバッド”の伝説を…ほら!ほら!ね!」

熱く自身の経歴を語りだすシンドバッド。内容的にはすごいことなのだが、こう必死に語られると若干引くものもある。…というのも彼を慕っているからもう少し冷静になってほしいと思うエリニカの心情が、であるが。


「ス、スゴイ…!!けど僕には、よくわからないよ!」
「えっ わからないの!?“マギ”なのに?」

あまりに必死な表情でアラジンに自分のことを話す主人を見て、笑いがこみ上げて噴き出しそうになるエリニカ。だがここは主人のメンツを保つため、口元を押さえ、震える肩を必死で止めようと下を向いた。隣にいたマスルールとジャーファルにはばれたらしく、少し冷めた目で見られていた。
しかしシンドバッドが必死すぎて止めようにも止められず、結局シンドバッドに「笑うな!」小突かれるまで肩を震わせていた。

コホン、と咳をするシンドバッド。主人に注意をされたので、エリニカも姿勢を正して真面目な体勢を取る。勿論心の中で笑いは止まっていない。


「まあ、“迷宮”については…長くなるし、今度じっくり教えるよ」
「うん…でもおじさん、僕一つだけ先に教えてほしいんだ」
「何をだい?アラジン」
「“マギ”って何かな?」



マギとは、私たち普通の人間とは違う絶対的な魔力の使い方の持ち主。勿論自身の魔力を使い切ってしまえば生命の危機に陥るが、自分以外の魔力を使役できることが最大の特徴。
目の前に長時間この青い巨人…ジンを実体化させらるのもマギだからできる業なのだ。
アラジンは魔力を使うと体力が減り空腹になるらしいが。

主の説明とマギのやり取りを聞きながら、自分も確か教えてもらったマギや魔力の知識を当てはめていく。
このルフに愛されし小さな少年。主が何かを心に秘めながら話をしていることは薄々気付いていた。


「そうだ…そんな凄い君に一つ頼みがあるんだが…」
「なんだい?」
「実は今、とある戦いを控えているのだが…俺にはとある事情で…金属器が今、一つもないんだ!」
「7つ全部盗まれたんですけどね」

ジャーファルの突っ込みがあっても動じぬシンドバッドにエリニカは主人の企みに確信を持つ。


「君の力を貸してくれないか?」

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なかなかうまく先に進みません!
14.01.25.
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