プロローグ




明星スバルに恋をしたのはいつからだっただろう。自分でもわからない程、あっけなく恋に落ちていたのだと思う。隣のクラスのプロデューサーとして彼を見てきた。彼のユニットのプロデュースはしていないけれど、それでも彼を自然に目で追って、彼の笑顔で元気になって、幸せを感じる。
学生のときから変わらず夜空に輝く一番星である明星スバルに恋をし続けるのに、私はいつの間にか慣れ始めていた。だからこそ彼らの言葉に衝撃を受ける。がつんと岩で殴られたような衝撃が、わたしと、わたしの同志をいとも容易く襲った。

「俺たち、付き合うことになったんだ〜」


私の恋は儚く終焉を迎えた。彼に想いを告げるわけでもなく、密かにか細く実った恋心は収穫されぬまま地に落ちる。ぐちゅり、半端に熟したその実は生々しい音を立てて形を崩した。飛沫を辺りに散らし、静かに終わりを告げた。
分かっていた。彼と結ばれることなど、今の自分では到底ありえないと。私はプロデューサーとして彼をたくさん見ていたが、彼は私を見ていない。彼が見つめて、信頼を寄せるプロデューサーは私ではなく、あんずなのだ。わかりきっていたことだった。
それでも私は恋をして、密やかな想いを育てていた。だんだんと育つその実を収穫できる日を待ちわびて、待ちわびた末に地に落として。
なんて馬鹿なの。と自分をせめても、惨めになるだけ。泣きわめくことも出来ず、回らない頭で懸命に考えた末に出た言葉は、あっさりとしたものだった。


「おめでとう、お似合いだね」

心のそこからの言葉とは思えなかった。必死に取り繕った笑顔で口にすれば、目の前の幸せそうな二人は何の疑問を抱くこともなく「ありがとう」と私の言葉を受け取った。
そういうところは、似た者同士なのね。知っていた、知っていたの。ずっと、思っていたの。あなたたちは似た者同士だと。似た者同士、私に傷跡を残していくのだと。

2020.11.10.

-2-

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -