Love call me.


16



日和さんも服と下着を脱いで次に進めていくらしい。ちょっとまってね、とへばる私に軽いキスをした。私はまだ少し息が整っていないのでベッドに横たわったまま、されるがまま。何かが破れる音がしたが、日和さんはこの行為の際ちゃんと避妊具をつけてくれる。恐らく包装が破かれた音だろう。少しして日和さんが戻ってくる。おまたせ、と言われたが、特別待っていたわけではない。出来ることならこのまま寝かせてほしい。あと変に優しくしてくるのが不思議でならなくて、ここ数日と比べて違和感しかない。どっちが本当の日和さんで、どっちが夢で現実なの?言いたいことはあったけれど、口にする隙を与えないように降り注ぐキスでかき消される。同時に触れられる頬に、耳に、首筋。今までなら乱暴に引き付けられることもあったのに、今日はそれが一度もない。添えられて、支えられる手が暖かくて大きいことに意識がいくほどゆったりとした時間を過ごしている。
まあ避妊具をつけたということは次にすることは決まっている。いくら早急に行為が進んでいっていないとはいえ、することはするのだ。私の意思は変わらず関係ないけれど。割られた脚の間、硬くなった日和さんの陰茎が私の膣口を撫でる。「いれるね」と小さく囁いた日和さんの声にどうにでもしてくれと吐息で返事をした。何度か滑らせてからぐ、と先端が進入してくる。

「はあ…っ」

日和さんの吐息が聞こえて思わず腰を引いてしまう。動いた私に気が付いたのか、日和さんはそっと腰に手を添えて固定をする。乱暴さはないけど、どこか逃げられない空気を醸し出しながら。ゆっくりと侵入してくるモノに息を吐いて違和感を逃す。近づいてくる腰に、ぴったりと凹凸が合わさったようにして挿入されていく。圧迫感を感じながら熱いモノを今まで以上に意識してしまうほど。こんなにゆっくりと時間をかけながら挿入されたことなかったのに。全て入りきったのか日和さんは自身が収まっている私の下腹部をしっとりと撫で回す。皮膚の上から触れるわけではないけれど、撫でられた私もすっかりと中を意識してしまってきゅうっと締めつけてしまった。日和さんはそれに怒らず、締まったね、なんて笑う。口にされると本気で恥ずかしいからやめてください。私が一番自覚してるよ、締めたことなんて。


「ん〜 双葉ちゃんの肌は柔らかくて気持ちいいね」

上半身を倒して日和さんは私の上に覆い被さってきた。挿入されたままだからぐっと位置が変わって変な感じ。そのまま胸元に顔を埋めるようにして私に抱きつく。柔らかぁい、とお腹も含めて触られるけど、さすがにお腹は気にしているから触られたくない。が、言ってもあまり聞き入れてもらえず。そのまま好き勝手身体中触られている。

「ひ、ひよりさん?」
「うん?」

私の肌に顔を擦り寄せながら日和さんは返事をする。ちょうど胸の辺りに顔があるので、そのまま日和さんが顔をあげるとめちゃくちゃ顔が近い。えっ めっちゃ近い…と戸惑ってしまうが、彼は別に気にしてないようだ。むしろそのままキスしてきそうな勢い。

「その、えーっと」
「どうしたの?」
「あー…どうしたんですか?なんかいつもと、違う…」
「…違うのはイヤ?」

好きとか嫌とかの問題じゃなくって。いつもと違うのはどうしてですか、という問いかけなんですよ。挿入してから動くまでに時間をかけるなんてしてなかったのに。挿入したら動いて、腰を押し付けて、揺さぶられていた数日を思い出す。比較してみると酷いものだ。優しくいえば強引に、大袈裟にいえば乱暴に扱われていたのだと。

「ぼくは双葉ちゃんに、優しくしていなかったみたい」
「え、…え?」
「優しくしてたつもりなんだけどね。違うって言われちゃったんだよね」
「はあ…」
「だから違うことをしてみようと思ってね」

こてん、と胸の上で首をかしげると日和さんのふわふわの髪が肌を撫でる。くすぐったさすら感じてしまって、小さく声が出てしまった。出てしまったものはもう遅い。彼は逃さないように、反応したわたしにかぶりつくようにキスをする。
彼は少し体勢を変えて、本格的にわたしは日和さんに押さえつけられてしまった。繋がっている下半身は更に密着し、彼が上から穿つようになればわたしの腰は自然と持ち上がってしまう。浮遊感が怖くて彼の腕を必死に掴んで、彼の腰に脚を絡ませて。それがいけなかったのか、今度は重力に従って腰を落とした彼がわたしの奥の奥へと侵入する。

「あっ…ぅ…」

快感ではない、これはむしろ、痛みだ。なかを押し広げられて、最奥を圧迫される痛み。気持ちよさでもなんでもない苦痛を感じ、叫びたくなるのを必死に押し止めて耐える。今まで度々奥の方を刺激されていたが、それも痛さはこれほどではなかった。快感とまではいかずとも突かれることに嫌悪を感じることはなかった。だが今は違う。これ以上の侵入も刺激も嫌だと思う。

「…これ、好きじゃない?」

必死に痛みをこらえる私に日和さんは小さな声で問いかけた。見るからに痛みを覚えていることがわかったのだろう。腰はそのまま動かさず、刺激が加えられることはない。ただ押し付けられることによる痛みだけが下腹部にじんじんと脈打っている。

「奥、いたい…」

自分で発した声が想像よりもか細く消え入りそうなものだというのに、妙に頭に響く。聞き取りづらかっただろうに、それでも日和さんは私の発した言葉をしっかりと聞き入れてくれたようだ。少しだけ腰を浮かせて圧迫から逃れる。浮遊感は持続しているけど、痛みによる苦痛は軽くなった。

「強かった?これは痛い?」
「は、あっ…今のは、大丈夫…」
「何回かすれば気持ちよくなるみたいだけど…もうちょっと時間をかけようね」

この前はいいところに当たっていたのか、痛みはなかったはずだ。今のように少し当たる位置が変わると痛みがない。どうしてこんな、今までにないことをするの。優しくしたくせに、優しくないことをすぐにする。
訳が分からないと思いながら、腰を支えてくれている日和さんの手の熱さを感じた。同時に私のなかにおさまっている彼の熱さと、先程とは違って快感に繋がる場所に接触したことで腰が揺れる。うまく言葉がでなくて、涙が視界を呑み込んでしまい、こくんと日和さんを見ながら頷いた。

「いいこ」

頭を撫でられ、ちゅ、とキスをされる。そのまま頭を撫でられ続け、身体が密着したまま腰が動く。最奥まで侵入するのではなく、彼も私も快感を感じられる動き。痛みを感じていたわたしを案じてか、日和さんは挿入部の上に位置する突起に触れて痛みから快感を感じられるように誘導した。

「あ、ああっ ん、は、ぅあ、」
「ああ…双葉ちゃん、…ん、っ」

思惑通りということか、わたしは彼から与えられる快感への刺激に素直に反応した。出し入れされる彼自身にも快感を覚え始めている。それに彼の先端が恐らくだが私のイイところに当たっているのだ。気持ちよさが段々と上り詰めていくのを感じる。
ずちゅ、ぐちゅ、という音が繋がっている部分から耳へと届く。快感が痛みに勝ってきたのだろう。恥ずかしく感じるはずなのに、聞こえる音によかったという安堵を覚える。

「ね…っはぁ、ぼくの首に、腕、回して」

折り重なるようにして上にいる日和さんが近付く。汗の香りに混じって、昼間気が付いた彼の匂いが鼻を掠めた。ああ本当にこの匂いは彼のものだ。私を見下ろす彼の瞳は潤んでいて、そしてその視線に背筋がゾクゾクと震える。彼の言葉に逆らうことなくゆっくりと首へと腕を回した。ぐっと近付いた距離。懇願するようにしがみつけば、私たち二人の距離は恐らく今までで一番近いものになった。胸も腹も下腹部も密着して足が絡み合う。ひとつの個体になるように、唇も合わせて。

「は、……ん、ちゅ、…」

上も下も繋がって、これでひとつ。今まで何度も繋がっていたのに今は妙にそう感じた。キスの合間に呼吸をして酸素を取り入れて、最低限の思考を回して、どうやって気持ち良くなるか。他のことを考える暇なんてない。お互いのことしか眼中になくて、目の前のことにしか興味がない。わたしはただ自分を求めているひとを、しっかりと理解してしまった。目の前の巴日和という男はわたしを欲している。
互いの声は口づけで掻き消されてしまっていた。時折漏れでる声で互いが互いを感じ合わせている。舌の動きが少し遅くなったと思えば、それはもう最終段階に入った合図だった。打ち付けられる腰の動きが速くなる。彼の息づかいが荒くなる。私の顔に触れている指先に力が入る。彼の絶頂を静かに示すそれぞれに気が付いてしまった私は、自然と中の彼を締め付けて自分で勝手に感じてしまった。しがみついた彼の頭に力をいれる。

「んん、ん、っ…んぅ!」

もうダメだ、と、込み上げる快感に身を任せようと強く目を瞑ると同時に、彼も最後に強く腰を打ち付けて身体を震わせた。どちらの声がどう出ていたのかよくわからない。重ねた唇はそのままに、日和さんは全て出しきったらしい。落ち着いたころには再び舌を絡ませてきた。散々合わせた唇に、ちゅ、と音を立てて吸われると腰が揺れる。これ以上は勘弁だ。熱い舌だけを絡めて笑う日和さんの表情は今までで一番柔らかく見えた。

2020.03.11.
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