Love call me.


11



午前の授業が終わり、日和さんと漣くんが揃ってレッスン室を訪れた。荷物をもった彼らはわたしを率いて巴家のミニリムジンに乗り込む。相も変わらず私の席は二人の間で、肩身を狭くして乗った初回のことを思い出す。今でも緊張はするものの、なんだか脱力してしまって普通に座っているが。そのままリムジンは寮に到着し、二人は私を一人部屋の方に突っ込んだ。

「じゃあいってくるからね」
「は〜い」

ヒラヒラと手を振りながら扉を閉め、鍵をかけて出ていく日和さん。まあ内側から開くんですけどね。…今は逃げないけど。というか私を送るためにわざわざ寮に寄ったのかと思うと、ご足労をお掛けしてしまった気持ちが強く出る。仕事に行く前なのに申し訳なかったな。
食材は適当に冷蔵庫に入れてあると漣くんが言っていたので見てみると、本当に適当に食物が入れられていた。適当なら適当にカップ麺でもいいんだけどな。…と思ったが、あの財閥の日和さんがいるのにカップ麺の選択をするのはあり得ないと首を横に振る。一人だし、まあ簡単に何か火を通して食べればいいか、とキッチンに立って作業を始めた。

食事も終えて、貰ったペンと紙を取り出す。レッスン室でも書き出し作業をしていた続きだ。ユニットをイメージしたもの、季節のイベントを意識したもの、去年関わったイベントの反省点などを活かしたもの…時間と意識が向けば今まで頭のなかに留めていたものが起こされていく。そんな作業をしていると、いつのまにか時間は過ぎていくもので。学校生活を送っている時はこんなに長時間集中することなどできなかったので、何だか変な気分だ。新鮮で、だけど複雑で。夢ノ咲のことを思い胸が痛くなると同時に今ごろ眠気が襲ってくる。そういえば午前中も色々と書き出していたから寝ていなかったんだった。お昼も食べているから急激な眠気が…。

「ふあぁ…」

大きな欠伸が出る。思わず声も出てしまうが、一人なので関係ない。とりあえず少し横になろう。今日の朝まで日和さんと共に寝ていたベッドに身体を横たえる。本当はシャワーを浴びたあとがいいんだけれど、そこまでの気力はない。確か漣くんが除菌スプレーを持ってきてくれていたはずだから、起きたらそれをシュシュッとして、あとは今日くらい晩御飯は自分で作りたい。…あれ、そうしたら二人はいつ帰ってくるんだろう。終わりの時間は言っていなかった気がする…二人はご飯…どう、するのかな…。
重い瞼がどんどんと視界を狭めていき、とうとう上下が重なった。そのまま二人の帰りを思いながら私は意識を手放した。







「………ゃん、……、…ちゃん」


何処か遠くで、音がする。私を呼ぶような声がする。ぼんやりとした意識のなかで、たくさん聞いた私の名前を呼ぶ声が…。髪を撫でられ頬に優しい何かが当たる。くすぐったくて身動ぎ、ん、と声が出てしまう。
ゆっくりと瞼を上げる。日が落ちた室内は薄暗く、家具も何も輪郭がはっきりとしない。それでも私の上に何かが重くのし掛かっているのは分かった。何十にも蓋をされている意識のなかで必死に手繰り寄せ、私の上にいるのが何なのか…ここ数日で見慣れた黄緑色のきらきら光る髪は。

「んん……あ、れ、ひよりさん…?おかえり、なさい…」

日和さんだ。ただただそう思った。もう仕事から帰ってきたのか。早いなあ。寝ぼけたまま口走った「おかえりなさい」という言葉に、彼は顔をあげて私を見た。

「あ、起きちゃった」
「………は?」

だんだんとはっきりしてくる意識のなかで、彼が私の上に馬乗りになり、挙げ句制服のスカートを巻くっているではないか。加えてなんか股がスースーすると思ったら、下着を剥ぎ取られるところだった。というか膝まで下げられていて、半分剥ぎ取られているところだ。

「ちょ、えっ?何して…んん?」
「仕事終えて帰ってきたら、双葉ちゃん寝ちゃってるから…悪戯してみちゃった!」

してみちゃった、って…嫌なほど違和感がないのが憎たらしい。いやいや、そういう意味じゃなくて。悪戯ってナニしたんですか?

「恥ずかしいから、本当にやめてください…」
「何で?感じてるのに?」
「どこが!?…っひ、やだ、何で濡れて…?」

完全に下着を剥ぎ取られたところで、秘部に日和さんの指が添えられる。割れ目に沿って動かされればそこからぐちゅり、と音が聞こえた。まさか濡れているなんて思ってもみない私は驚きを隠せなくて、日和さんの肩口にぐっとしがみついた。
そんな反応をした私に、彼は嬉しそうに笑顔を向ける。しまったと思う余裕なんてなくて、どうして、何で、私は恐らく眠ってしまっただけなのに…と動揺を隠せない。


「寝てる双葉ちゃんに、悪戯、したんだよね」


低い声で呟いた彼は身体を倒してキスをした。いたずら、は恐らく、寝ている私に触れたのだろう。呑気に寝ていた私は彼にされるがまま、無意識のままに身体は感じてしまっていたというわけだ。
ちゅ、と唇を吸い上げられて、短いキスが終わる。細く美しい日和さんの指が私の唇から頬、首筋をなぞって動いていく。いつもだったらそんなに意識しないのに、身体が勝手にびくびくと反応をしてしまう。怖い、私はどうなっちゃうの。

「首筋にキスして、耳を舐めたり…噛んだり……ん、ふふ。そうそう、寝ながら震えてたよ」
「〜っ、ふ…、ぁ、ん、…あッ」
「柔らかいほっぺにもキスしたし、鎖骨もさわるとビクビクしてたね」

こうしてね、と優しく、まるで子守唄を歌うみたいに耳元で囁かれる。吐息混じりの声が直接脳に響くようで、全身が声に犯されてるみたいに甘い痺れが駆け巡る。ぞくぞく、びくびく、胸を鷲掴みされたような、声で心臓が握り潰されるみたいな、私の命が彼の手中にあるのだと言われているみたいで。

「胸もいじって、…おへそもかわいいね」
「や、だ…!」
「下着は濡れてなかったけど、下はしーっかりぐちゃぐちゃ…ちゃんと感じてえらいえらい」

敏感なところに触れられて、泣いてる子供を慰めるようにしてくる。面倒見のいいお兄ちゃんのようで、だけどやっていることは正反対。それでも私は只、目の前の彼にすがり付いて、懇願して、彼に教え込まれた快楽に乗っ取られていく。


「お仕事頑張ったぼくをちゃあんと労ってね」

熱い吐息がお互いの頬を掠める。そのまま分かち合うように自然と唇が重なった。すぐに離れて、また重ねて。そのときにはもう舌を滑らせるように混じりあって。溢れる唾液は気にしないし、乱れる服は汚れる前に脱いでしまおう。二日間で教え込まれたことを反芻するように、私は彼へ脚を絡ませるのだった。

2020.02.21.
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