あんさんぶるスターズ | ナノ

ひとりでとかしてくれる?

※本番なし茨だけイく
※茨が喘いでいる
※双葉さんがSっ気寄りにみえる


えっ…と目の前の恋人が狼狽えるのを見て、少しだけいらっとした。

お互い久しぶりに仕事がはやく終わり、夕方には帰宅をしてしっかりとした夕食を摂った。確かに近頃はそういった男女としての触れ合いをする時間はとれていなかったと思う。仕事のストレスも加えてフラストレーションが溜まっていくのは仕方がない。生理的なものだとしても、だ。

「…理由を、お聞かせ願えますか」
「生理前でそういう気分じゃないからだよ」

けれどそれはそれ、これはこれ。今、わたしは生理前で体調も気分も絶不調の真っ最中。正直なところ、胸は張るし下腹部も違和感がつきまとうし、下手にからだに触れられることも、恋人の茨くんであれ不快に思ってしまうくらいに不調なのだ。
だからそんな、茨くんが求めるような行為をする気分ではない。というのを伝えれば、賢い彼なら納得してもらえると思っていたのだが。

「う……そ、だろ…」

絶望の淵に立たされたみたいな顔になっていた。
そんなにもわたしとセックスしたかったのか…と思う反面、わたしがその欲に応えてくれる対象になっていることは嬉しく思う。だがそこまで溜まっていた性欲を解消できる回数に付き合いたくないという正直な気持ちが表情に出てしまっていた。
彼はなまじ体力がある分、こちらもそれに付き合わなければならないのはしんどい時があるのだ。今は絶対に、付き合いたくない。不調のなかで体力まで消耗したくない。

自分がいかにかわいくないかという自覚をしながらも、意思を曲げるつもりはない。だがそれは彼も同じなようで、どうしても性的な行為をして発散したいらしい。持ち前の経営者力を活かしてか、わたしの腕をつかんで品のよい笑顔を浮かべた。

「マグロでもいいんで、付き合ってください」
「マグロになるかならないかじゃなくて、セックスをしたくないの」
「なっ…」

がつんと固まる表情。続けてだんだんと青くなり、血の気がなくなっていく。
交渉に失敗するとこんな感じになるのだろうかと勝手に想像し…いや、茨くんに限って、交渉相手にこんな弱みを見せるわけがない。その場ではそれなりにやり過ごすのだろうし、こんな顔をするのも恐らく身内認定されているからなのだろう、とこちらも勝手に解釈させていただく。
それにしても青くなったまま口を閉ざした茨くんが、本気でやばそう。血流悪くなりすぎてない?死なない?

「なんでそんな、この世の終わりみたいな顔するの…別に嫌いっていった訳じゃないじゃん?」
「え、いや…ですが…」
「生理前ってわたしいつもこんなでしょ?今更そんなに動揺しないでほしい」

何故こんなにもセックスを拒否しただけで。普段、出来ないときは出来ないといっているし、そういう時は引き下がってくれているのだが。こんなにも引っ張られるとは思ってもみなかった。
絶望的な顔をする茨に、何も思わないわけではない。自分だってストレスが溜まっているときは、美味しいものを買って帰ろうとか、今日は茨くんとごはん食べに行くから家事しなくていいとか、仕事終わりの救いを頭に浮かべて尻を叩いている。
たぶん茨くんの今日の救いは、わたしとのセックスだったのだろう。それがないときのショックは分かる。絶望にも似たものだというのはわかる。だからこそセックスの相手はせずとも、どうにかしてはあげたいと少しは思うのだが。

「とりあえず脱ぐくらいはするから、ひとりでしてくれる?」
「え!?!?ひとりで!?」
「脱ぐんだからそれくらいひとりでしてよ」

悩んだ末の妥協案。何もしてあげないよりはいいだろう。脱ぐんだぞ?オカズ提供してあげるだけ良いではないか。

「手を借りることは…」
「嫌だよ。動かすの億劫だし」
「胸くらい、さわらせてもらっても…」
「触られたくないから駄目」

彼からの提案をことごとく却下していく。脱ぐだけ上々なのだと気付いてほしい。いらっとして、ダメダメと頭を横に振る。
今の茨くんはどこかおかしい。ストレスにあたりすぎたのか、疲れすぎたのか、仕事で何かあったのか。弱々しいところを見せるのは恋人関係になってから時折あったが、方向性が違うような。

「どうしてセックスにこだわるの?何かあった?」
「いや別に…」

何かあったんだろう。目に見えて落ち込む茨くん。仕事のことかもしれないし、あまり深追いして聞きはしないが…まあその、なんだ。落ち込む姿があまりにもかわいそうに思えてきたのでちょっと考え直してあげようと思う。
ねえ、と頭を抱える茨くんに声をかける。彼にとってはあまり変わりがないかもしれないが、わたしにとっては先程よりも歩み寄った。今の体調からなら、これくらいで勘弁してほしい。

「……キスはしてあげるから、一人でして」

その問いに、彼は何を言われたのか一瞬理解ができなかったらしい。数拍おいて「わかりました」といった瞳はギラつく熱を込めていた。






「んっ…、は、ぅ、んむ」

キスをしながら、前を寛げた茨くんは言われた通り、ひとりで自分を慰めている。わたしはというと本当にキスしかしていないため、彼の両頬に手を添えて、きれいですべすべな肌質を堪能している最中だ。

「っは……双葉…」

顔にしか触れられなくてもどかしいのか、わたしの名前を呼ぶ声も、表情も、切迫している。それが逆に色っぽくて、セックスはしたくないけど気持ちはいい。
いつもは自分が攻め立てられる方で、茨くんが感じていてもこんなに冷静ではないから、余計に色気を覚えているのかも。
今は触られるのはいやだけど、腰に手を回すくらいならとそれだけは許可した。したのだが。まあなんとも熱っぽい手だ。触られたくないという私に考慮しているのだと思うが、いやらしい触り方はしてこない。ただ時折、ぐっと力を込められて引き寄せられるものだから、どうにも可愛く思えてしまう。

「ぁ…んぅ……」

ちゅ、と音をならして舌が吸われる。熱い息を吐くと共に離れていく柔い感触。小さくあえぎながら、茨くんは首筋にすり寄った。あ、かわいい。そう思ったのがいけなかったのか、思わず肩口にある頭を撫でてしまった。わたしの手が触れた瞬間、びくりと全身で反応を示した彼に、いけないことしたかなぁと静かに思う。
けれど怒鳴られるわけでもなく、彼はわたしの首筋に息を吐きながら、自分を慰めることは続けていた。


「胸、」

すり寄る彼がなんだかかわいくて、胸に埋まることを黙って許した。首筋にかかっていた熱い息が今度は谷間にかかる。わたしも彼の熱い息に、小さく気持ち良い声を漏らせば腰を抱く腕に力が込められる。
と、一瞬、冷たい感覚で身体が浮いた。固いなにかが胸に当たる。なにかと思えば彼の眼鏡がご丁寧にわたしの胸に当たり、しかも当たったことでずれてしまっている。

「とって」
「え」
「眼鏡」
「は、うん」

切羽詰まった声で、言われるがまま彼の眼鏡をとった。もともと鋭い目付きなのに、眼鏡をとると視界がぼやけてみえるからか、更に目付きを悪くさせてこちらをみる。眼鏡とったらみえなくなるなんて、分かりきっていただろうに。
なんて思っていたが、彼はそのまま、再びわたしの胸へと顔を埋めた。ああ、そんなにも顔を埋めたかったんだね…。


「…は、っは…っん、は…ぁ、う…」

わたしの胸に顔をおさめたまま、彼は硬くなった自身を扱き続ける。先走りでぬちぬちと小さく音がしていて変な感じだ。目の前でひとり、興奮で昂る茨くんをみている自分が、こんなにも他人事でいることが。

「っん!」

なんて思っているところに、大胆にもべろりと谷間を舐められる。下着を脱ぐのを忘れていたが、こうなった以上、ここで脱げば胸は餌食になる。
彼も了承したと思ってエスカレートするかもしれないので、済まないけれど下着はここままにさせてもらおう。


「なに、茨くん、そんなに胸好きだったっけ?」
「っ……ええ、まあ、自分も男…ですので」
「強がらなくてもおっぱいすきって言っちゃえばいいのに」
「くっ、双葉のでないと、意味がないんですよ!」

そういいながら谷間にがぶりと噛みつかれた。ただ彼は噛み千切ろうとしたわけでもないので、わたしにとっては戯れ程度の痛み。
切羽詰まっているから思い切りされるかもと身構えていたが、それ以上の痛みは与えられなかった。

「あっ」

代わりに今度は柔い肌へと吸い付かれる。舌で感触を味わいながら、好き勝手につけていくキスマーク。彼なりの仕返しというか、当て付けというものだろう。けれど今のわたしにはそれすらも茨くんをかわいいと思うスパイスにしかならない。

「いいよ、見えないところなら」

頭をひとなでして、胸の間にいる彼を見る。下からはわたしの「いいよ」という言葉を確かめるかのように、目付きの悪い視線が突き刺してくる。
本当か?と問う視線に、うん、と答えれば、茨くんは荒くした息のまま再びわたしの柔肌へと唇を寄せた。

「ん、っは…ふふ」

必死に自慰をしながら、胸元に噛みつき、吸い付く恋人の姿に笑みがこぼれる。肌を撫でる彼の紅い髪がくすぐったさを増していく。
全く興奮していないわけではない。けれどこれは性的快楽へと続かないものだ。ただの自己満足へと繋がっている愉悦。今までにない自分のなかに疼く感覚に、面白いくらい振り回されて。

「、ぅ、は、…あ、っん…!」
「イっちゃいそう?」
「は、双葉…ッ」
「うん、うん」

いつの間にか噛みつきも吸い付きも止めて、彼は谷間に顔を埋めながら必死に手を動かしていた。そんなにわたしにもたれ掛かって、自分の弱みを見せて、なんてかわいいんだろう。
今セックスすることは煩わしいけれど、いつかセックスするときにこの感情を忘れられているだろうか。

「茨くん、こっちむいて」
「へ、…んっ!……ぁ、はふ…ん、ぅあ」

彼の顔を掴み上げ、唇を奪う。荒い呼吸の彼から酸素を奪い取る。予想外のわたしの行動に反応が遅れた彼は、私にされるがまま。

「っぷは、…いいよ、イって」

さすがに突然キスをしてそのままイって、なんてことはしない。少し酸欠にさせて思考を奪ってから囁くようにすれば、きっと素直に従ってくれるかもしれないという打算はあった。
屈辱的だったのか、茨くんは不機嫌に眉間にシワを寄せながらわたしを睨み付け、ふぅふぅいっている。やがてそれも限界なのか、わたしの胸へと再び顔を埋めてしまった。よしよしと頭を撫でながら熱い息のかかる胸元を意識する。

「あ、っう、ああ…は、はあっ…ぁあ、ぐ……っ」

わたしにしがみつきながら、茨くんは今までと比べて少しだけ大きく喘いだ。
腰を小さく揺らしながら白濁の液を放出する。目の前で行われている恋人の自慰の最終地点に、わたしはぼうっとそれをみているだけ。
大きな手のなかに出された粘着性のある体液はそこそこ量がある。どんだけ溜めていたのだと呆れてしまうが、もしかしたらそれほどに今日、私と過ごせるのを楽しみにしていたのかもしれない。と改めて思う。

彼は未だにわたしの胸元に顔を埋めたま、乱れた呼吸を整えようとしている。まさか相手がいるにも関わらず、自慰をしなくてはならなくなってしまった恋人の姿はかわいそうでかわいい。
上手にひとりで出来たね、と言葉にはしなかったが、まあそういう意味を込めて彼の頭のてっぺんに唇を寄せれば、腰に回っていた腕に一瞬だけ力が込められた。

2020.11.27.
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