突然、ひょっこり現れたのだ。零くんにそっくりな彼―――ベクターは。


「あ、あっ…ん、…っ!っう…、ふぅ…!」
「強情だなあ、いい加減認めりゃいーだろ?」
「っん、や…っれ、くん…れいくん…!」


ベッドに押し倒され、服は乱れ、胸と恥部は露出し、顔は涙で濡れながら口は漏れる嬌声を懸命に抑えていた。それでも中に進入してくる目の前の男の性器はどうしてもイイトコロを突き甘く攻めてくる。ぎゅ、とシーツを握りながら堪えるだけ。

ある日を境に姿を消してしまった真月零。大好きだった彼が突然いなくなり、それでもいつか帰ってくると信じて待った。でもなまえの前に現れたのは、彼と同じ姿をした、全く別の人物だった。
声も姿も彼と一緒。なのに全く違う。彼は何処。かれは、零くんはどこにいるの。

「零くん、零くんって…俺がその零くんだって言ってんだろ!」
「ち、がう…れいくんはもっと、やさしくて、怖くなくて、わたしを、そんな、ふうに扱わない、っんん!」

ぐちゅぐちゅと粘着音を立てながら私の中に出し入れを繰り返す男の性器。怖くて痛くて仕方がなかったはずなのに、いつの間にか溢れる体液を潤滑油代わりにして。痛みはまだある。でも久しぶりに行う行為に下腹部は嫌でも疼いている。


「じゃあお前のイイトコ、当ててやろうかァ?」


ぐ、と足を割られ奥に入り込む。そのまま45度右に回転させられ、出し入れが再開された。

「おらっ おらっ!ここがイイんだろ?ここ、擦られんの好きだったよなァ!?」
「や、っん、んう…!っあ、ああ、ふ、」

正面じゃなく、横向き。多い被さるのは恋人に似た別人。けれど腰が抜けるように気持ちいいところを突いてくるそれは恋人を錯覚させるよう。正面からでは得られない、違うところを突かれる快感。横向きのまま膣を擦られるのは好きな体位の一つだった。

「イイんだろ…なあ!ひっでぇ顔してるぜ、泣きながらよがってる雌の顔でよォ」
「やだ、っや、ああっあ、あ…、あ、やめ、んんっ」
「腰が浮いちまってんじゃねーか…ゆらゆら揺らして、もっと欲しいんだろ?」
「れ、く…っグス、れい…れいくん…っんあ、っれ、あ、アッ」

彼の性器が中の襞に引っかかる。それがまた気持ちよくて、擦れる度に腰が疼く。

「ッチ、今、なまえを抱いてんのは俺だ…!」
「ん、んあ、あっあ、ァ、あ!、ひぅ、ん!」
「俺は、零じゃない…ベクターだ、っベクターだ!」
「れ、…っんあ、はあっあ、は…あ」
「なあ、ほら…好きだろ?こうやって、強く突かれるの、すきだったよなァ?ん?」
「んんあっ!あ、だ、め…っああ、あ!はあ、つよ…い、よぉっ」


ベッドが大きな音を立てて鳴く。ギシギシという音も気にしてられないほど、この男の律動はなまえをおかしくさせる。
確かにこの男の突いてくる場所は全部私の感じやすいイイところ。恋人しかしらないその場所。たとえ聞いていた話だとしてもダイレクトに、こんなに上手く突けるはずがない。認めたくないが肌に触れるその手は恋人を錯覚させるには十分で、…それでも彼は、零くんではない。

「っ、は……は、っなまえ…なまえ…」
「あ、れ、…れい、くんっ…たすけ、っれ、あ、っあ、れーくん…!れいくん!あ、やあ…あんっ」
「やめろ、呼ぶな…」
「んん、は、れい、れい…っあ、」
「っウルセェ!」


零、と名前を呼ばれる度にムカムカと胸の内が黒く渦巻く。確かに自分であるのに、自分であったはずなのに、全く自分とは別の人物の真月零。その名前を聞きたくなくて咄嗟になまえの口を塞ぐ。
無理矢理塞いだ口、絡める舌、肌に触れる熱い息、塞がれてもなお口の中で甘い声を上げるなまえ。恐らくそのくぐもった声の中には“零”と言う単語があるだろう。わかっていてもその単語を聞きたくない一心で舌を絡めた。
ふにふにと弾力のある胸を弄る。舌や首筋、鎖骨を指でふわふわとなぞってやる。敏感な肌は優しく触れられるとビクビクと簡単に反応する。そう、こんなことを知ってるのは俺だけ、俺ただ一人なのに。

「あ、あん、ふあ、れ…ァ、くん、ンぁ!れい、っく…っ…ひぅ」
「なまえ…っあ、はあ、…っん、なまえ、」
「だ、だめ、さわっァ、たら…んああ!あ、やぁ、だ、おかし…っン、なっちゃ、うぅ…っひ、あ」
「るせえ、もっと鳴けよ、っおら、きゅうきゅう締めつけて、イイんだろっイイって言えよ…!」


前みたいに、イイって言って、キスをして、俺の首に腕を回して抱きつけよ。
口からこぼれそうになった言葉を咄嗟に飲み込む。ただ、こいつが零のことばかりを紡ぐのが悔しくて、零を求めているのが憎らしくて。

「っクソ、…は、イくぞ、ちゃんと、出してやるから受け取れよ…ッン、はあ、」
「や、やだ、中は…だっ!〜〜ッう、は、っん、あ、あっ、んぅ、」


ごぷ、と白濁の液を挿入したまま、中に注ぎ込む。締めつけるなまえの膣に搾り取られるように全部、全部出してやる。そのまま出した液が流れ出ないよう性器を中に埋めたまま。息を切らし、涙いっぱいに濡れた顔を手と腕で覆うなまえ。ああ、出した液が零のすべてを忘れさせ、自分で上書きできればなんと嬉しいことだろう。なまえに愛され、自分を認めてくれたなら。
出来もしない願いを胸に秘めながら、汗ばんだなまえの首筋に顔を埋める。チロ、と舌で舐め強く吸いついた。何度も、何度も。

その肌に残した紅い痕だけが、ベクターの想いを示している。



寵辱の紅


――――――――
紅葉さまへ。
真ベク→夢主→←真月で、真ベクの無理矢理裏のリクエストをいただきました。
う、うまくベクターからの想いを表現できずに終わってしまいましたが、夢主の零くんを一途に想う様は表現できたと思っております。意地でも「零くん」としか呼ばないように、と。
それではリクエストありがとうございました!
13.09.19. 祐葵
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