時刻は既に日付が変わってすぐの深夜。安眠していた私はギシ、とベッドの軋む音に眠っていた目を覚ました。一体何の音か、と寝起きでぼーっとしている頭で考える。もぞ、と動く大きな影……私の眠るベッドに誰かが上ってきたようだった。

しかし、まだはっきりとしない視界と暗闇も手伝ってそれが誰なのか視認することはできない。その誰かは下の方から覆い被さるようにやってきて、やがて私の腰(正確にはシーツの上)を愛でるように撫でた。…こんなことするのは、もしかして。と考えたところで、その人は口を開く。


「なまえ、起きているのだろう?」
「………X」
「抵抗しないとは……私以外だったらどうする」
「こんな時間に誰が来るっていうの……何の用?」


予想通り、Xだった。咎めるような口振り、どうやらほんの少し機嫌を損ねてしまったようだ。ああ、彼の機嫌は一筋縄では直らない、ちょっと面倒だ。などと思いつつ、上半身を起こそうと身体に力を入れる。が、肩を押さえつけられ、それは叶わなかった。


「夜這い、と言ったら?」
「トロンと貴方の弟たちに成敗してもらおうかしら」


冗談混じりに言ってみるが、結構効いたらしく、彼はグッと黙った。恐らく原因はトロンだろう、Xはトロンに対してとても忠実だから、といってもまあ私がトロンに告げ口してもトロンは何もしてくれないだろう。私はただの助手でしかない。復讐に関することならともかく、彼には私がXに何をされようがどうだっていいことだ。もちろん、彼の弟たちはXを咎めてくれるだろうが弟は弟。Xが言うことを聞くはずない。

どうやらXも同じことを考えたらしい。そんなことは関係ないと言うように、腰に触れていた手を服の中に忍ばせてくる。ひやりとした指先がお腹に触れ、無意識に身体をぴくりと揺らした。


「きゃっ…」
「随分可愛らしい声を出すな、普段淡白な君からは想像できない」
「X…!」


とうとう彼に股がってきて身体の身動きが取れなくなる。せめてもの抵抗で私の肩を押さえつけている彼の腕を掴んだ。しかし非力な私の力でXを押し返せるはずもなく、無駄に力を浪費するだけに終わる。研究ばかりしていて、Xだって力があるわけじゃないのに…なんだか少し悔しくなった。そのくせXは私が彼に力で敵うはずもないとわかっているからか余裕の表情で少し微笑んでいる。本当にムカツク。


「……放して。私眠いの」
「私は構わないが、いいのか?」
「んっ…!ちょっと……!」


服の中に忍んできているXの手が胸に触れ、さすがにヤバイと感じて掴んでいた彼の手を放して胸板を押した。けどやっぱり動かない。ああ、もう、どうしよう!別にこういう行為を彼とするのは初めてじゃない。けれど今は……そんな気分じゃない。

考えているその間にもXはやわやわと胸を揉みしだいている。そういう、気分じゃ…ないってば……!声を出さないために顔を歪めながら唇を必死に噤んでいると、それが気に入らなかったらしく無理矢理に口吻てくる。


「ぶ、X……んむっ」
「…は……ん……なまえ」
「っ…ん、ん……ふぁ」


僅かに開いてしまった口内に舌がぬるりと入り込んでくる、熱くて肉厚のある感触が私の舌を刺激して、頭が上手く回転しない。しばらくして唇が離れると口の端から唾液が溢れ、それをXがぺろりと舐めとる。その淫猥な仕草についドキリとした。


「………少しは、その気になってくれたようだ」
「…ま、まさか!早く部屋から出て行って…っん」
「あまり騒ぐとVやWが起きてしまうだろう」


触れるだけのフレンチキス。依然としてこの男は引く気はないらしい。……Xのバカ。もう、どうにでもなってしまえ。



0603
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バルドルの夢 ゆうちゃんから相互で頂きました!
もうキュンキュンしちゃうくらいに悶えちゃったXくん。ありがとううう〜
どうぞこれからもよろしくお願いします!
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