日差しも暖かな午後。風が頬を撫でている。
本来ならば建物内で授業を受けているはずなのだが、それもこれも恋人が膝で眠ってる所為で動けないのだ。


「ねえ十代」
「んー?」
「授業いこうよ。呼び出しされちゃう」
「大丈夫、大丈夫。どうせ出ても寝るだけだし」
「私は寝ないもん…!」


お昼休みからの延長線。昼食を食べたあと静かな裏庭へと連行された。何もわからぬまま木陰の芝生に座らされ膝枕を開始し、授業が始まっても解放されない、という出来事は今までに数度あった。
そのたびに授業へ行かなくてはと言うのだが、授業にでても大半を睡眠で過ごす十代には出ても出なくてもあまり変わらぬ話らしい。
私は真面目に出たいのだが。

「たまにはいーじゃん」
「これ何回目よ…」
「へへっ」


結局は十代に付き合ってそのまま授業をサボってしまうわけだが。これがまあ実戦授業でデュエルだったらサボるなんてことはしないだろうに、もう少し筆記にも力を入れてほしいものだ。

「なんだかんだなまえは付き合ってくれるもんな」
「仕方ないでしょ、動けないんだから」


膝の上で笑う十代を小突く。それも戯れのうちで、痛みを伴うものではない。
もう仕方ないと諦めている。十代は自分の思うように、自由な考えで行動する人間なのだと知ってしまったから。

風が吹く。木の葉を揺らし、髪が舞う。
気持ちよく瞳を細めて風を受けていると、下からぐいっと引っ張られた。引かれるままに身体を前へと倒す。丁度十代の上に被さる形で前に倒れ、芝生のにおいがとても近い。


「お前も寝転がれよ」
「え…」
「気持ちいーぜ?な!」
「うわっ」

十代が膝から頭を退かし、また引っ張られて今度は確実に身体を芝生の上へと転ばせた。十代に向き合う形に、手を握られ、寝転がる。

「芝生の上は気持ちいいだろ、ここ、とくに木陰だし」
「…うん」

ぎゅ、と手を包み込まれ握られる。ああ確かに、芝生に寝転がるのは気持ちいい。
冷たい葉が肌に触れ、土のにおいを感じる。木陰でもあるからか風が小さく吹いてもひんやりと肌を流れる。

「ねえ、今度は休日に来よう」
「休み?休みに校舎くるのか?」
「違う!休日に、森に。森には芝生はないけれど、気がいっぱいで気持ちいいよ」
「…森、怖くないのか?」
「十代がいれば」


ぎゅ、と、包み込まれていた手を外し、十代の指先を握った。ちょっと熱くて、ちょっと怖いけれど。

「お弁当作って、ゆっくりしよう」
「弁当!エビフライ!」
「おにぎりはシャケね」
「ああ!くぅ〜なまえのエビフライ美味いもんな!」
「ありがと」



十代が目の前で笑ってくれている。私も微笑めば、風が二人を包むように吹いた。

もうすぐ、午後の授業が終わるチャイムが鳴る。


――――――――
悠久時計のアキさまへ!相互記念です。
十代ほのぼの、ということで承りました。ほのぼの…ほのぼの…あまり書いたことない気がすると思いながら書いてました(笑)
本当はイラストと共に御渡しするつもりだったのですが、先に絵だけという形に。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!
13.09.05.
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