「さてさて、じゃあ次は何処に行こうか?」


先頭を歩くなまえは後ろを振り向く。後ろには一緒にハートランドへと旅行へ来た丸藤、吹雪、優介と、ここハートランドで出会った年下の子供たちがいる。

今日は突然のなまえの「ハートランドに日帰り旅行に行こう!」という提案でやってきていた。最低限の荷物を持った彼らは突然の出掛けに準備が不十分であった。
ちなみにこの日帰り旅行は昨日の夕方決まったもの。なまえは前々から来たかったらしく、事前に調べてはいたものの…。
連れてこられた三人にはもっと早くに知らせろとか、予定も少しは考えろとか、不満に思うところはある。だがなまえが笑えばため息を吐きながら許してしまえるのは、きっとその笑顔がほしいから。これは藤原だけでなく吹雪と亮にも言えること。

そうしてハートランドに訪れ、出会ったのが遊馬たち。ベタな出会い方ではあるが、なまえと遊馬が角を曲った先でぶつかってしまったのが出会い。
そこから連れであった小鳥と鉄男、凌牙、璃緒たちとともに行動をしている。


「楽しそうですわね」
「ええ、なまえさん、すごく楽しそう」
「可愛い女の子とこうやって出掛けられるの、すっごいうれしいの!」

小鳥と璃緒の腕を掴み、ぎゅっと抱きしめるように二人を引き寄せる。

「キャットちゃんも、おいでおいで。ふふ、いっつも男といるからさ、こうやって女のこと出掛けるのがうれしいんだよー」

キャッシーをも巻き込み、3人を腕に抱えて可愛い可愛いと抱きしめている。滅多にされることがないからか、なまえの腕の中の3人は恥ずかしそうにしながらも困った表情になっている。
そんな年下の同性を熱烈に可愛がっているなまえを見る三人。同性とこうやって親しくしていることが普段ないため、珍しくなまえが同性といると言うことに安心をしているらしい。安心と言うだけではなく、なまえが喜んでいる姿を見て自分のことのように嬉しく思いながら。


「本当にね、なまえは女の子大好きだからね〜」
「えっ なまえさんって女子がすきなのか!」
「吹雪、それだと語弊がある。なまえは女子を愛でるのがすきなんだ」

吹雪の言葉に反応したのは遊馬。その吹雪の言葉に対し注意したのは藤原だ。

「もちろん遊馬くんもかわいいよ!」
「かわいいっていわれても嬉しくねー!」
「そういうところが可愛いのにねえ」

とは言っても半分が遊馬と同い年であり、可愛いと思うのは年上くらいであろう意見になまえに賛同するのは亮たちの旅行同伴者だけだ。
賛同がなかなか得られなかったことに若干の不満を持ちながらも、なまえはよからぬことを思いつく。
ぱぁあ、と表情を変えたのに気付いたのは遊馬。また遠くからなまえを観察していた凌牙と長年共にいる亮、吹雪、藤原だった。


「ん、じゃあ遊馬くん、お姉さんと手を繋いでみようか」
「え、ええ…いいよ、そんなん」

差し出された手となまえの顔を交互に見る。遊馬は差し出された手に首を振り、なまえの戯れを断った。
そりゃ中学生にもなって手を繋ぐというのも照れくさいし、なにより今日出会った素性も知らぬ年上の女の人と手を繋ぐことなど誰が想像するだろうか。

「遠慮しないの!」
「い、いい、いい…!こ、小鳥と手つないでてくれよ!」
「えっ私!?」

咄嗟に逃げようとした先に遊馬は幼なじみを差し出す。そんな遊馬に苦笑しながら、吹雪は逃げた遊馬を腑に落ちない顔で見ていたなまえをなだめる。


「おい。どうしたんだ」
「いや、なまえさん、ねーちゃんとは別の感じでなんか…圧倒されるっつーか」
「勢いがありますものね」

遊馬と同じく、小鳥を犠牲になまえから逃げ出してきた璃緒。楽しいのだけれど、とフォローしつつ、今の圧倒的ななまえのスキンシップに少し疲れたような空気をだしている。
遠くで見ていた凌牙も同じか、遊馬の言葉を聞いて納得をしていた。

しばらく小鳥に意識を集中していたものの長くは続かず、結局遊馬共々かわいがられてしまっていた。
うまい具合に逃げ出した凌牙は遠巻きにみているのが一番安全だと理解したらしい。一番被害のなさそうな藤原の近くに場所をとって佇んでいた。
凌牙の気持ちを察したらしい藤原は出会った当初よりも疲れた表情をする彼に同情をした。



「ん?」
「なあ、誰か近づいてきますけど」
「え?」

言われて辺りを見回す。こちらに近づいてくる影を捉えた一行はその正体が何であるかまではわからない。ただなまえと藤原、亮、吹雪にはなんとなく見知ったシルエットだと感じていたが、確信はなかった。

「ああ、あれ…」

しかし近づくにつれはっきりとする正体。記憶にある、よく見た姿。
あの黒髪に黒コート、シルエットは恐らく…


「なまえさん!!」


怒った表情の人物はこちらに近づきながらなまえを呼ぶ。
特に驚かない旅行者4人に遊馬たちは驚いた。もしかしたら知り合いかもしれないと感づいた凌牙を除いて。

「わ、万丈目くん。どうしたのこんなところに」
「どうしたの、じゃないです!今日は家で勉強教える約束だったでしょう!」
「え?そうだっけ」
「万丈目くんなまえに教えてもらうつもりだったの?ナンセンスだよ〜」
「おれじゃなくて!十代の!です!」

帰りますよ!となまえの腕を取り歩く万丈目。対抗するように踏ん張るなまえ。


「だからあれほどスケジュールを把握しておけっていっただろう!」
「優介はスケジュールスケジュールって細かくてうるさいんだもん、やだー!」
「なまえさんっ!」
「まだ遊馬くんとかなでなでするのーっ」


なまえの駄々に困った顔をするものの、なんだかんだ可愛がってもらうのは嬉しいらしい。遊馬も小鳥もキャッシーも、恥ずかしがりながらなまえとの別れを寂しがっていた。
なかなか直らぬ駄々に吹雪が一つ提案をする。日帰り旅行先での出会いがこの先も続くよう、連絡先を交換をすること。そうして連絡先を交換し、なまえを含む4人は万丈目の迎えの車で帰って行った。


――――――――
8500キリリクのアクアさまへ!
大っ変遅くなって申し訳ありませんでした!!
書き直していたら三天才とあんまり話していない子になってしまったのですがががが…此処直してー等ありましたらご意見おまちしております…ウウ…
リクエストありがとうございました〜
13.09.05.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -