先日、なまえは「天城」となった。
告白という告白も無いまま、付き合うという段階を飛ばし、俺となまえはつい先日に役所で籍を入れたのだ。もちろん俺も彼女も18歳である。
結婚式は挙げていない。一応、俺の身の回りがしっかりとしてから行うつもりでいる。なまえも「待つ」と言ってくれたので同意の上だ。

籍を入れて変わったことはあるのかとよく質問を受けるが、正直言うと、彼女の姓が変わったぐらいだと思う。
籍を入れる前から同じ屋根の下で暮らしていたし、お互い知らないことはほぼ無いし………今だって、例のごとくなまえは俺の前髪を引っ張り、俺はそれを流しながらデッキの整理をしている。
まぁ、前髪を引っ張っているということは、構って欲しいという意思表示なのだろうが。


「ねぇー、カーイート」
「なんだ」


俺が溜め息を吐きながら顔を上げると、なまえは前髪から手を離した。


「あのさぁ」


彼女は離した手で頬杖をすると、いつも通りすぎる嫌らしい笑みを湛える。
俺が、どうした? と先の言葉を促すと、なまえは自らの下腹部に手を当てながら言った。


「子供って可愛いよね〜!」
「は?」


唐突すぎる言葉に、俺は手にしていたカードを机の上にばらまいてしまう。

なぜいきなり言い出したのか、そしてなぜ下腹部に手を当てているのか、俺は分からなかった。いや、後者は分かりたくなかった。


「いやー、ハルト見てるとやっぱ子供っていいなーって思ったのよ」
「……そうか」
「子供って純粋で可愛いよね〜!私は女の子が欲しいな!」


カイトもそう思うよね! 俺に同意を求めてくる彼女に、俺はやはり溜め息しか出ない。
こいつは本当に、俺と夫婦であることを忘れでもしているのか。それとも作為的なのか……。


「なまえ……あんまりバカなことは言うな」
「バカなことじゃ無いよ?」


なまえはそう言うと、いつかみたいに身体を乗り出し俺の唇に自分のソレを重ねる。


「私、カイトの子供産みたい」


彼女は照れたように微笑み、俺の前髪をくいっ と引っ張った。
俺は彼女の頭に手を回し、今度はこちらからキスを落とす。やられてばかりでは、釈然としない。

長らく付けていた唇を離し、俺は出来る限り低い声で彼女の耳に言葉を落とした。



「安心しろ。俺だってお前以外に子供を産んでもらうつもりなんてない」



俺の言葉に身を捩ったなまえを、俺は優しく抱き締めた。



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悠久時計のアキさまより、相互記念にいただきました。
アキさま宅のカイトくん短編の続きとなっております。続きが読みたい余りに書いていただいちゃいました…うへへ!ありがとうございます!
どうぞよろしくお願いいたしますー^^
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