カイトの部屋を掃除してそのままベッドで居眠りをしていた。こんなのは日常茶飯事で、いつも見つかっては怒られている。学習しないと思われていても学習しないわけではなく、見つからないように寝てるだけだ。いつも大体見つかってしまうけど。
壁に掛けられた時計をみればもうそろそろカイトが帰ってくる時間。ここで出迎えてあげようと、再びベッドに顔を埋める。暫くして部屋の扉が開かれる。近づく足音の正体はカイトだとすぐわかった。

「なまえ」

いつの間に意識が飛んでいたのか、名前を呼ばれ、足音で覚醒したぼうっとする頭で頭を挙げる。


「ん…、おかえりなさい」
「俺の部屋で寝るなと何度言ったらわかる」


ため息を吐きながら私のいるベッドへ近付いてきた。そのまま寝転がる私に覆い被さるようにしてベッドへと乗り上げてくるカイト。顔の横に手を付いて、片方は私の頬へと。
それ以上なにをする訳でもなく、私と向き合ったまま。ほら、する気なんて何もない。


「出来ないくせに」
「……何?」
「出来ないくせに、するフリはいい加減やめたら?」

上半身を起こした体勢でカイトへぐっと近づく。反射的に逃げたカイトを捕らえるようにコートを軽く握る。手を出してこない代わりに私がカイトの頬へ手を伸ばし、なぞって唇に触れる。
ぷっくり、意外と柔らかい唇の感触を残した指。
静かに外せばその腕を掴まれ、カイトの方へ引き寄せられる。突然の出来事で固まってしまった私はなされるがまま。いつの間にか頭に回っていた手は離してくれない。近付いた顔に、触れる唇さえも避けられぬまま受け入れた。

「…っカイト、ん」
「は、……ん、む」

触れた唇は強引さを残し、触れると言うよりも食べるという方が合っていた。柔らかい舌が唇をこじ開け歯茎をなぞる。離してくれない唇に諦めをつけ、大人しく口を開けて舌を差し出した。

「んっ…!」
「…、ちゅ、」
「、っあ、カイト…、は、ン」

執拗に絡む舌はそろそろ限界で、身体を離そうにも頭を固定され唇を押しつけられたままだから離せない。もぞもぞ動き始めた私に、掴んでいた腕を放す。その代わりに今まで私の腕を掴んでいた手は腰に回ってしまった。
ああ、これじゃもう逃げ出せない。

「ふ…はぁ、…」
「は…あ、カイト」
「俺が何も出来ないと……踏んでいたようだが?」


ニヤリ、いたずらな笑顔を浮かべた。今までにみたことがないくらいのその表情に、驚きと共にゾクゾクと背中を駆けめぐる何かを覚える。

「今までの俺とは違うんだ」
「…そう、らしいね」
「ああ。なまえに幾らでも手を出すことが出来る。こうして…」

肩を押され、上がっていた上半身がベッドへと沈む。その流れに身体を倒してきたカイトは再び私の顔へと近付いてきて。


「こうしてお前を」


重なった唇に消えた言葉。それは言いたくなかったのか、それともあえて言わなかったのか。とりあえずなんでもいい。
ようやくカイトと交じりあえるなら。すべてを溶かしてぜんぶ一緒になれるなら。
私の細胞すべてを、あなたが奪ってくれるなら。


上手に奪ってくださいね


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Twitterでも仲良くしてもらってる、バルドルの夢のゆうさんへ!
カイトはヘタレだという話をしたのであえて攻めてみました。これからもお願いします〜
05.15. piacevole! 祐葵
(タイトル→レイラの初恋)
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