「なまえの頬は柔らかいな」
「そ、そう?」
「ああ。それに温かい」
「えへへ」
「そして心地がいい」
「ふふ」
「いつまでも触れていたい」
「え…っ」
アストラルはなまえの頬をむにむにと触っている。唯一触れる、触れてもらえるという人間、それに触れないでいられようか。
天然とも取れるアストラルの発言になまえは顔を赤くした。
「…お前ら俺の前でいちゃいちゃするの止めろよ」
…というのもお昼休みの最中、皆で集まる中での出来ごとである。アストラルがなまえに何をしているかが見えている遊馬はいら立っていた。もちろんこの場に他に見えている人間がいれば遊馬と同じことを言ったであろうけれど、残念ながらアストラルは遊馬にしか見えていない。
「っていうかなまえって本当にアストラル触れるのね」
「ああ、俺も触れねえし」
「キャット想いが通じているからね」
そんな周りの言葉を聞いているのかいないのか、マイペースを貫く二人は遊馬のいうことを聞きもせずに再び触れ合っていた。…というよりもアストラルがなまえの頬をつまむのを再開した、と言った方がいいだろう。
つまんだり、頬を撫でたり。いろいろと変えながら自分にはない体温をなまえから感じている。
何故自分にはこの熱がないのだろうか。そんなことを考えたこともあったが、今ではダイレクトになまえの体温の厚さを実感できるということが心を落ち着かせる。
「アストラルは本当に体温がないんだね」
「ああ。だからなまえ、君のぬくもりはとても温かい」
「じゃあ」
アストラルが触れていたなまえの頬。手のひら全体を頬につけて撫でていた。その手を上から自身の手で包み込んだなまえ。
「私の体温、わけてあげる」
「っ!」
「こうすれば、ほら、アストラルの手も温かくなるでしょ」
手に触れる温かななまえの頬と手。両方からなまえのぬくもりに包まれたアストラルの手はまるで自身が熱をもったように熱く感じた。
「…ああ」
彼を見つめる彼女の瞳も同じく熱いもので、そっと交わす視線に二人は微笑む。
周りの人間にアストラルの姿は見えないが、なまえの笑顔と纏う空気に自然と温かなものを感じていた。
「だから!イチャイチャすんじゃ、ねえぇえー!!!」
…その様子が見える遊馬を除いて。
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WDC前くらい。イチャイチャは遊馬にしかみえてないためイライラするのは遊馬くんひとりですね!
13.04.27.