※若干の下ネタ?



肌寒さに気が付き、目が覚めた。寒いなんて滅多に感じないのに。シーツを肩までかけようとシーツに手を伸ばすがなかなか掴めない。まだ頭がはっきり働いていないため、目は閉じたままだったが、仕方なくシーツを掴もうと目を開いた。
しかし視界に入ってきたのはシーツでも何でもなく、下着しか身につけていない自分と、服を脱ぎ捨てて寝ているブルーノの姿だった。

…いや、冗談。嘘でしょう。
状況が飲み込めない。一体どうしてこんなことになったのか見当もつかない。とりあえずもう一回寝よう。そうすれば状況が変わっているかもしれない。ほらこれ、夢かもしれないし、もう一回寝て起きれば夢から覚めてることだってあるかもしれない。
そうしてシーツを肩まで掛け、もう一度寝転がる。
私が身体を丸めてから少しもしない時間を置き、今度はブルーノが動き出した。


「ん…ぅ、ん…」

寝起き特有の掠れた声で声を出している。寒かったのだろうか、「シーツ…」と小さな声と共にシーツを引く。が、そう簡単に渡してやるものか。ブルーノがシーツを引くのと同時に私もシーツを引っ張れば何か異常を感じたのだろうブルーノが身体を起こす。
というかなんで目を瞑ってるのにここまでブルーノの行動がわかってしまうんだ。どうしてこうも寝ている感触も、ブルーノが動く度に感じるベッドの動きさえ分かってしまうんだ。夢ならそんなこと、分かるはずないのに。


「……え、あ、…なまえ、?」


どうやら、ブルーノもこの状況が飲み込めないらしい。

慌てふためき、わたわたしているブルーノのために私は寝るのを止めて起きた。
ベッドの上で二人下着姿のまま、正座で向かい合う。なんてシュールな…いや、なんて気まずい空気なのだろう。


「で、なんでこの状況になったか覚えてる?」
「いや、覚えてないんだ。ごめん…」

どうやら私もブルーノも、どうしてこうなったか覚えていないらしい。お互いの服はとりあえずこの部屋に放ってあるのでいいとして、問題はここがブルーノの部屋と言うことで。

「昨日、僕たちはお酒を飲んでたんだよね」
「そうそう、それは覚えてる。みんなが寝た後も飲んでた」
「僕、そこまでしか覚えてないんだけど…」
「……奇遇だねえ、私もだ」


あー!と二人で頭を抱えた。とりあえず服を着ようだなんて提案ができないほどに、今混乱している。そう、混乱しているんだ!この状況に!!

「どどどどうしようどうしよう」
「あ…ああ、もしかしたら私はブルーノと、その、あれかもしれないわけで」
「僕、なんてサイテーなことをっ」
「まだ決まったわけじゃないけど!ね!?」

まさか朝起きて下着姿で、もしかしたらお酒に飲まれてそういうことになっちゃった可能性も考えなきゃいけないわけで、どちらかが覚えていればいいけれどどちらも覚えてないと来た。
どう、どうすれば…誤解というか過ちをしていないか確かめられるだろう。

「ハッ!」
「何!?どうしたのなまえ!」
「ゴミ箱!ちょっとブルーノ、ゴミ箱見せて!!」
「え、ちょ、えっ」

この部屋のごみ箱は確かベッドのそばにあった筈。下をのぞきこめば案の定ゴミ箱があった。その中身を見て、私は絶句する。

「……ティッシュ、いっぱい………」
「………それ、僕がさっき確認して、言わないでおこうと思ってたことで」
「何で言わないの!物的証拠!!!」
「だってそれじゃあ想像通りになっちゃうわけなんだよ!?」

そうだ、そうなのだ。こうして物的証拠が出てきてしまったからにはその可能性が嫌というほどに高くなってしまっているわけで。


「ねえ、なまえ。身体の方は何か変化はない?」
「…だるい」
「……!」
「いや、お酒飲んだ次の日はスカッとするか、だるくなるかの二択なんだよ」
「…じゃあ情事翌日の何か症状とか」
「んー、腰は痛くないんだよ。重くもないし」

こう、はっきりとした証拠がない。ティッシュの中身は怖くて開けられないし、でもそれ以外の証拠がなかなかない。やったかやっていないか、確かな証拠が。
二人でベッドの上で頭を垂れる。どうしようもない状況に二人とも脱力が現れてしまう。
それでも起きなければとため息を吐きながら、床に落ちている服を取ろうと顔を上げた時。そっと私の手を包み込むのはブルーノの大きな手。


「僕、真実がどうであったとしても、なまえを大切にする覚悟はできてるよ!」
「もし想像が真実だったら、もう私のこと大切にしてはいない気が」
「責任は、とるっ!から!」
「ブルーノ…」

優しく、でもちょっと怖いと思いながらも私の手を包んでくれたブルーノの手を、きゅっと小さく握り返した。





「はあ?何言ってんだ、お前ら。ブルーノは酒飲み過ぎて鼻水ズルズル、なまえは寝ぼけすぎてブルーノの腕を抱き枕にして掴んだまま寝ちまってたじゃねーか」
「「え……」」
「それでブルーノも気持ち良さ気に酔ったままなまえを腕から離すのがかわいそうだからって、一緒に部屋に入ってったんだよ」
「なんでクロウが知ってるの?」
「まだ飲んでんのか心配になって様子見に行ったんだよ!わざわざな!!」

案の定、深夜日付が変わっても飲んでるし、流石に部屋に行けって言ったのは俺だ。
そういったクロウは少し疲れているようだった。そりゃ、深夜にわざわざ起きて私たちをベッドに行けと言ってくれたわけだから疲れるか。

「はあ、じゃあやっぱり未遂かー」
「よかったー 僕、なまえになにもしてなくて」
「なにも?」
「うん、起きたらお互い下着姿だったんだよ」
「部屋のごみ箱もティッシュいっぱいで。鼻水なら安心した」
「鼻水っつったのは、キッチンの方のごみ箱だぜ?ほら」

クロウが指さすキッチンのごみ箱には、確かにティッシュの山が入っていた。それはもちろん、ブルーノの部屋にあったように大量で。


「あー、部屋に行った後のことは知らねえよ。何かきゃっきゃ言ってたのは聞こえたけど」

その言葉に絶句したのは、言うまでもない。

―――――――
真実は私の中に。
やったかやってないかは御想像にお任せします(笑)
13.04.05.


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