私の遊星への想いはどこまで繋げられるだろうか。
そう、いつの間に、ジャックからの気持ちに傾き始めていたのを私は気付かないふりをしていた。


「なまえ」

サテライトで出会った頃からジャックは私に好意を向けてくれていた。それは私が遊星を想うより酷く強い想いで。だってシティに出てきてキングへと上り詰めても、私を想ってくれていたんだもん。
サテライトを出るときも、俺についてこいと誘ってくれた。しばらくしたらシティに戻るからという約束を、ずっと待ち望んでいてくれていた時にはもう、ジャックに気持ちが傾いていたのかもしれない。そう、気付かないふりをしていただけで本当は、



「お前は…っどうして俺を、見てはくれない」

私の上にいるジャックは瞳の奥に情欲を映しながらも、悲しそうに眉を顰める。その原因は私なのだけれど。
ソファへと押しつけられている腕。これじゃどうしようも出来ない。ジャックの頭を撫でるのも、頬を撫でるのも、大丈夫だよと背中に手をまわすことさえ、出来ないのだ。


「…ねえ。遊星を忘れさせて、って言ったら、忘れさせてくれる?」


そう言った私にジャックは目を丸くする。私がそんな事を言うをは思わなかったのだろう。酷く驚いた顔をして、言葉が口から出てこない。
私だってこんなことになるとは思わなかった。ジャックには悪いけど、ずっと遊星を好きでいると私自身、思っていたのだから。だから例えベッドに押し倒されても、ジャックはそのまま私を抱くなんてしないと確信があったから誘いに乗ったのだ。今まさにその状況でもある。

ジャックはどんな気持ちだろうか。本気で抱く気はなかったのに、今、色々と揺れ動かされているだろうか。
俺様で、キングで、いつでも強気。なのに目の前でこんなにも戸惑っている。年下だから、可愛いななんて思えるけれど。
ねえ、私の誘いに、どう応えてくれる?


「この俺以外、考えられないようにしてやる」
「本当?」
「ああ、本当だ」

一瞬、揺れた瞳。それでもその瞳にある情欲の炎は消えない。意思を固めたのか、先ほどよりもずっと強い眼差しで見つめられる。
大きな手が私の頬に触れた。ゆっくりと壊れ物を扱うかのように、触れているのかどうかわからないほどに優しく。

「じゃあお願い、私をジャックのものにして。忘れ、させて」

ジャックは顔を近づけるが、唇同士が触れる寸でで止まった。互いに目は瞑っておらず、アメジストの瞳は私を見つめている。離れていくジャックの顔に目が瞑られ、私の胸元に額をつける。
しゃらん、と重力によって私に落ちるペンダント。重さがやけにはっきりと感じられる。


「…全て、忘れさせてやる」


吐息が首筋を撫でる。ちゅ、と音を立てたジャックの唇は熱い。
私にすり寄るこの男の頭を抱きしめようと、そっと腕を浮かせた。




この片想いを、辛い想いを、貴方の気持ちとで揺れ動いていた日々を。
貴方で全部埋めて、忘れさせて。

新しいふたりの関係を、いま繋ぎましょう。

――――――――
シリアス担当ジャック。フォーチューンカップ辺りか、その直後くらいの話で。
ジャック夢は基本「遊星←なまえちゃん←ジャック」からの分岐です。遊星が傾くか、なまえちゃんがジャックに傾いてしまうか。
13.01.26.


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