アキが遊星に勉強を教えてもらいに来た。しかし毎度のことながら遊星はDホイールに目が向きがちだ。ブルーノがいじくっていたら尚更遊星もいじくりたい視線を送ってアキのためにならない。
だから今回はアキが「外で勉強を教えてもらいたい」と提案したところ、遊星がお金は俺がと言い、アキもアキで教えてもらうんだから私が、と言い合いになっていた。いつまでも出ていかない2人に、こんなんじゃいつもとあまり変わらないじゃないかと思う。行くなら早く出て行って勉強しろ!痺れを切らした私は「おねーさんが出してあげるから!」と言って必要なお金を押しつけて2人をガレージから出した。
もうすぐお昼だからランチも食べて来い、夕飯も食べてくるならどうぞというだけの金額は出したつもり。背中を押す私に逆らえず、2人はしぶしぶお金を受け取ってガレージを後にしたのだった。


「いいの、遊星。あの2人だけにして」
「ああ、いいんだ。あの2人は、もう少し近づいてもいいと思う」

他のやつがいると近づきづらいだろうと、遊星が2人を思ってガレージを後にしたことは知らない。



2人がガレージを出て行ったあと、ガレージ内を見渡せば私とブルーノしか存在しない。そりゃクロウは配達業があるし、ジャックはクロウの手伝いに無理矢理連れて行かれた。遊星とアキは今まさに追い出したところだし、当たり前といえば当たり前なのだが。
ブルーノはDホイールをいじり、パソコンをいじりと作業を進めている。遊星がいなくてもちゃちゃっとやっちゃうあたり、機械慣れしているのだなあとしみじみ思う。

「ブルーノ、お昼何食べたい?」
「あ、なんでもいいです。簡単に作りやすいので」
「そう言わずに。あと敬語もなし」
「えっ」

手元から顔をあげて私を見るブルーノの顔は本当に驚いている。そんなに驚くことだろうか?そこまで他人でもないだろうに、ブルーノは未だに私に少し距離を置く。そんな一時の関係にするつもりはないし、これからもブルーノがこのガレージにお世話になるなら私も関わっていくと思っている。だからもう少し親近感とか、堅苦しさを抜いてもいいと思うのだけれど。

「ええっと、じゃあオムライスがいいな」
「うん。量は多めかな」
「その方がいい、かな」
「一緒にごはん食べよう。区切りがいいとこのいくまであとどれくらいかかる?」
「じゃあ30分くらいで区切りをつけるよ」
「わかった。できそうになったらまた呼ぶね」

戸惑っている表情だったがブルーノが私に対して普通に言葉を返してくれたので私も何事もないように言葉を返す。遊星やジャック、クロウ等と差のないように接するのが一番だ。
そういって私はお昼の支度にとりかかる。ブルーノも自分の作業に戻った様で、Dホイールとパソコンに注がれる視線はもうこちらの様子を気にするようなそぶりは見せていなかった。



「「いただきます」」

できたオムライスやスープにサラダ。それをテーブルに並べ、二人で向かい合って座る。手を合わせて挨拶をして料理に手をつけた。リクエストのオムライスはそれなりに得意だったからできはいいと思う。
私はサラダをつつきながらブルーノの食事の様子を盗み見る。ブルーノはそれはまあ美味しそうにオムライスにがっついて食べていた。サラダもちゃんと食べて、スープも飲んでくれている。と、そんな私に気が付いたのか、ブルーノが口に入れる手を止めた。

「えっと、?」

やっぱり食事を見るのは失礼だよな。でもこうしてじっくり料理の感想を聞ける機会なんて早々ないから聞いておきたい。だから見ていたことには謝っておく。

「ごめん、美味しそうに食べるものだから、つい」

その言葉を聞いたブルーノは少し頬を赤く染めて口を噤む。下に顔を傾けてしまったので何か悪いことを言ってしまっただろうかと戸惑う。遊星なんかとは違う反応をとられたのでどうしたらいいか私もわからない。あれ、どうしよう。

「うん、美味しいから…」
「…ふふ、美味しそうに食べてもらえて光栄です」
「こんな美味しいごはん作れるなんて、なまえはいいお母さんになるよ!」
「お母さん、ねえ…。相手いないけど」


私の言葉にブルーノは「ご、ごめんなさい!」というけれど、別に謝ってほしいわけじゃない。そこは笑うところだと言いたかったけれど事実悲しいことは悲しいことなのでそのまま謝罪は受け取っておこう。ちょっとへこんだらしいブルーノに、そんなに気にしないでと笑って食事を再開するとブルーノもまた食事を再開した。

食事を食べ終わり、食後のコーヒーを出して一息つく。すぐに作業に戻ってもいいけれど、そんなに急ぎじゃないらしいのでお茶に付き合ってもらうことにしたのだ。食直後なのでおやつはナシ、コーヒーだけで。ブルーノと2人で話すなんて滅多になかったから変な感じだ。


「作業は順調なの?」
「うん、それなりにね」
「遊星を外に出しちゃまずかったかな」
「いいんだ。余裕があるから、遊星も外にでないとね」

ブルーノは記憶喪失だそうだ。出身も年齢も、名前でさえもわからない。唯一わかるのは機械系のこととデュエルのことだそうで。そんな都合のいいこと、なんて思ったこともあったけれど現実そうなのだから仕方がない。
そんな彼は遊星よりも絶対年上だ。よく遊星にも気遣いをしているし周りを見る目もある、と思う。というか大人特融の落ち着きが垣間見えると言うか。


「ブルーノはきっと23、4歳くらいだと思うの」
「僕?」
「そう。ジャックよりは年上な気がするわ。あと言うなら私に近い年齢」

成人はしていると思う。ジャックももうそうだが、ジャックよりは年上だとも思う。遊星も落ち着きはあるけれどやっぱり年下なんだよね。クロウなんてまだまだ少年が抜けてない部分を知ってるし、最近じゃ大人の仲間入りしそうだけれど。そう考えてもブルーノは三人よりも年上ではあると思う。
いや、それはただの私の願望かも知れない。私は酒飲み仲間がほしいのだ。それにブルーノがなってくれればいいと、心のどこかで思っている。だからそう、ブルーノは私に年齢が近い、他のみんなより年上の男性だって思ってしまうのかもしれない。と、自覚しながらもそれを知らぬように、接する。

「無邪気に機械いじくるのは少年っぽいけど、やっぱりブルーノは大人だと思うのよね。冷静だし、落ち着いてるしね」
「きみにそう言われると嬉しいな」
「そ?」
「うん。だってこの中では頼れるお姉さんじゃない」
「ブルーノのお姉さんにもなるの?」
「だって僕はお兄さんって感じじゃないでしょ?」
「あっはは、そうかもね」

お姉さん面するのは嫌いじゃない。実際お姉さんとして振る舞っている自覚はあるし、馬鹿みたいに世話を焼くことだってある。ここにいる子たちより年上だからそれが当たり前だと思っているけれど。他の人から見ても、ちゃんと私は頼りにされているんだなって思えてなんだか嬉しい。
まあブルーノのお姉さん、っていうのには少し抵抗があるけれど。出来ればブルーノには対等でいて欲しい。せめて私の話しを共感してくれる、対等な人になってほしいと願っている。
だからだろうか、よく考えもせず、頭に浮かんだ言葉を口にしてしまったのは。



「でもまあ、その私がお母さんになるための相手に一番近いのはブルーノだと思うけど」


特に悪気はない。ただ言葉にした時には全然意識していなかったし、自然と何も考えずにスッと出てきたことを言っただけだった。テーブルに頭をぶつけたブルーノの反応に、自分が今口走ったことを自覚したときにはもう既に遅かった。

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ブルーノちゃん!
推定年齢は私の願望(夢主とお酒を飲ませたいから)。
13.01.18.


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