ジャックは人気だ。キングを降りた後でもこうしてファンの女性は多い。子どもからの人気も続いている。現キングの遊星も負けずにファンはいるけれどジャックもまだまだ。カーリーなんか明らかだし、御影さんとかもそうでしょう、ってわかりきったことを挙げても仕方がないか。
エンターテインメント性があるのは私も理解している。周りを見ている…かどうかは別として、どう楽しませて、楽しませながら勝てる方法を彼は自然と行っている。だから余計に性質が悪い。知らぬ間に人を惹き付けているんだから。

「あ、ジャックだ!」

子どもたちはジャックをみつけて群がる。女の人たちは遠巻きに見ている。
わかりきったこと、…なんだけど。
なんだか気に食わないなあ。ジャックが格好いいことは別に気に食わないわけじゃない。そうじゃなくて、年上なのにこうやってジャックの人気にもやもやした気持ちを抱いている自分が、気に食わない。
…嘘。人気のあるジャックも多少気に食わないし、年上なのに我慢できない自分はもっと気に食わない。
外に出ればジャックは目立つ存在なんだってわかってはいるのに。毎回自分に嫌になってこうやって帰ってくるんだ。


「どうしたんだ、なまえ?」
「んー別に」

何食わぬ顔でいうジャック。何食わぬ顔で返す私。
ジャックは元キングだしキャーキャー騒がれるのは当たり前だったんだろう。そんな彼を見てきたっていえば見てきたけれど、好きになる前だったから気にならなかった。好き同士になって、改めて感じるジャックの人気。
あーやだやだ!年上なのにどうしてこうもうまく制御できないのか。もっと落ち着きたい、落ち着いた年上彼女になりたい。自分の中のまだ子どもの部分が心底嫌になる。

こうして毎回毎回、自分の中でごちゃごちゃした気持ちを整理する。勿論バレないようにこっそりしてるつもりだけど、きっと機嫌が悪かったりするのは表に出ていると思う。
今だってムスッとしている自覚はある。そのままジャックを見ているのだからばれるだろうな。
いくら考えてもジャックに構えば忘れたりするから結局はそれで治まるんだけれど。

「ねえジャック」

だからまた今日も、ジャックに甘えるんだ。本心は年上だから甘えたくないと思ってる。それでもジャックにしか治せない。ジャックに触れることでしか落ち着かない。
ソファに座るジャックの首に抱きつく。こうなることは予測済み、みたいな態度で私を抱きしめ返す年下の彼。

「やっぱり我慢できない」
「どうしたというんだ」
「ジャックは私だけのものだよ」

私にかける声はやっぱり優しくて。

「…俺はお前だけだと、ずっと前から言っているだろう」
「うん。でもやっぱり心配なんだもん」

こんな年上彼女でもいいかな。もっともっとジャックを感じたい。ジャックは私のもので、私もジャックのものだと実感したい。
いつでもジャックを独占したいだなんて、年上にはあるまじき考え方じゃないかな。それでも私はジャックの彼女としていて、いい?


「だからお願い。もっと私の身体に叩き込んで」

欲情を孕んだ瞳でみつめる。ジャックの大きな手を掴んで包み込む。
強請るように指先に唇を近づけ、音を立てて口づけた。

「御安い御用だな」

なまえ、と耳元で囁かれた自分の名前。肌に感じた吐息に目を瞑って委ねる。
その時の顔はとてもいたずらに、でも楽しげに笑みを浮かべていた。
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ジャックに甘えたい年上彼女。
2013.01.07.


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