※社会人ヒロイン



姉さんの姿がみえなかった。どこに行ったのだろうか、と家の中を探していた。話声が聞えたのはリビングで、そこに足を踏み入れれば何故か足が止まった。

「ねえさ――」

そこには姉さんだけでなく、リシドもいて。それと…


「マリクくん!」
「なまえさん」

姉さんの知り合いで、日本からのお客さんのなまえさんがいた。

「わあ、久しぶりだね。相変わらず背がお高いことで…また伸びた?ん、高校生でも背は伸びるよね。うん、伸びてる気がする!」

なまえさんはよく仕事の休みを取っては家に遊びに来てくれている。まだ生活に慣れていなかったころは色々と教えてくれた恩人でもある。姉さんよりも年上なのに、こうして僕に構ってくるとそうはみえない。そういうところが可愛いとは思うんだけれど。

「なまえさんは相変わらず小さいね」
「もうお姉さんは伸びないんだよー」

ぎゅう。
僕より小さいなまえさんは僕の胸辺りに顔を埋めて抱きついてくる。これももう当たり前のことだから姉さんもリシドも笑って見ている。抱き疲れる度、僕がどれだけ固まっているか本人は知らないだろう。

「あー、早くマリクくんお嫁にほしいなあ、イシズ!」
「まだ駄目ですよ、マリクがもう少し大人になったら」
「私の結婚適齢期については」
「それについては把握してないわ」

“お嫁”について触れない姉さんに軽く笑いながら、なまえさんの言葉を頭の中で繰り返す。
繰り返さなくても毎回毎回言われていれば耳に残るのだが。僕をお嫁にする!というのは結構前から言われている。なまえさんのお気に入りの自覚はあるし、甘やかされて、恋人も作らずに僕にいろいろしてくれるから“すき”でいてくれてるとは思うけれど。

僕は少なくともなまえさんのことを“女性として”すきだ。
でもなまえさんはわからない。僕を“弟”の様な存在としてすきなのか、それともちゃんと“男”としてみてくれているのか。


「ねえ、マリクくんがもう少し大人になったらっていうけど、私がちゃんと養うよ」
「…マリクをもう少し男としてみてあげて」
「み、みてるよ!」

しっかりしてるし、統率力あるのはイシズが保証してるし、いい子だし!イケメンだし、将来有望!
抱きついたまま褒めるなまえさんだが、これが真剣に言っているように思えるだろうか。真剣に言っていて欲しいとも思うが、どうにも信憑性がない。

「そんな事を言っているからマリクも貴女の言葉を信用しないというのがわからないのかしら」

はあ、とため息を吐きながら頬に手を当て、姉さんが僕を見る。僕の気持ちを知っている姉さんは「複雑ね」という視線を向けた。
なまえさんは姉さんの言葉に驚いて僕を見た。その視線にうろたえた僕を見て戸惑っていることがばれてしまったらしい。しゅん、と項垂れたなまえさんは本当に年上だろうかと思うほどに少女の面影が残る。まるで同年代の女の子を相手にしているようで。

「えっ …そっか、冗談に聞こえちゃってたのかな」
「いや、その」
「じゃあちゃんというね」

抱きついていた僕から身体を離す。そして向かい合って、なまえさんが僕の手を握る。僕よりも身長の低いなまえさんは僕を見上げながら視線を合わせて口を開いた。

「私、マリクくんのこと本当に好きだよ。いい大人がこんな年下の男の子にって言われるかもしれないけど」
「そんなっ」
「イシズにはちゃんと言ってあるの。マリクくんが私のこと好きになってくれたら私にくださいって」

僕に送る視線に、嘘を言っているような様子はなく。むしろお願いされているような感覚に陥る。なまえさんの気持ちは本当だと、今更ながら自覚をもつ。
ああ、僕、この人のことが好きだ。だからちゃんと応えたい。なまえさんに応えられるような大人になりたい。

「でも早いよね。だから、まずは私と付き合ってみませんか?」


孵化する恋慕


「僕もなまえさんのこと、すきです」


この想いを孵化させて、貴女に恋していいですか。


――――――――
ちょっと書いててよくわからなくなってしまった。
けど、マリクくんは基本社会人ヒロインさんになりそう。
タイトル→レイラの初恋
13.01.09.


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