ぎゅっと後ろから抱き締められて、もう何時間になるだろうか。
こうして優介に甘えられるのは少なくない。結構な寂しがりだから、部屋に二人きりになったり、私が変にドライに接した時はよくあることだ。今回は特に何もなく、ただ優介がすり寄ってきたからそのまま抱きつかせているだけで。
しっかり座っているのも疲れるから、私も優介に寄りかかる形で体重をかけている。膝の上で持参したチョコレートの箱を遊ばせながら、優介の甘えに少し自分も便乗した。

「…なまえ」
「ん?」
「キス、」
「したいの?」

ん、と私の肩に口を当て、上目づかいで私を見つめる優介。そこらの女の子より可愛いかもしれないなんて思ってしまう。実際女の私よりもこういう仕草は優介の方が可愛く見えるのではないだろうか。最も、私以外の前ですることはないだろうけれど。
そっと優介の頬に手を伸ばし、親指で滑らかな頬を撫でて顔を近づける。重なった唇は柔らかい。

吐息と共に離れた唇と薄く開かれる瞳。
無言の訴えに再び目を閉じた。重なる唇に、先ほどと違うのは優介の舌が私の唇を這っていること。仕方ないなあ、と口を開けば遠慮なく侵入する舌。私の舌を絡め取り、ちゅっちゅ音を立てながらまるで食べるように貪って。ちゅっちゅ、なんて聞いてるだけじゃかわいらしいけれど実際優介のこれは思った以上にねっとりとやらしいものだ。


「ふ…ん、ぅ」
「ん、は…なまえ…ちゅ、んっん」

優介はチョコレートを一つ、とる。其れを口に含んで私に口づける。絡まる舌に、2人の熱で溶け始めたチョコレートが混じっていく。互いの口内がチョコレートで甘く麻痺して。

「甘い」
「そりゃ、そうでしょ」


いつの間にか私の視界には天井と優介が映っていて、ソファに押し倒されたんだと気づく。
背中の柔らかな感触、流れる髪、目の前の欲情した優介の顔。口元に触れるのは冷たいチョコレート。端を口で挟み、優介がもう一方の端を口に咥える。歯を立てた優介は軽い音を立ててチョコレートを割った。中から流れ出たリキュールをこぼさぬよう、唇を合わせる。
ああ、甘くて熱い。

「ん、く…」
「っは、あ、」

優介の頭を両腕で掴みキスを強請(ねだ)る。跳ねた髪を指に絡ませながら、撫でるように頭部を抱えて。優介も私の頬を撫でながら大きな手で私の顔を口づけやすいように固定する。もう片方の手は私の腰に回り、逃がさぬようにしっかりと体を密着させていた。
火照る身体に、大胆にも私は足を絡ませる。それができてしまうほど頭の中はすべて優介で埋まっていく。


「ゆ…、すけ」
「…なまえ」
「頂戴」
「ああ、いくらでも」


甘い甘い、口づけに。
甘く甘く、堕ちて往く。

――――――――
チョコでキス。藤原が一番似合うんじゃないかと思って。
13.01.25.


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