※二十代さんとエッチしたら力が流れ込んでいつのまにかなまえちゃんにも精霊がみえてたとかいう摩訶不思議な設定があってですね。 「…ユベル、さん?」 『なんだよ』 「ほ、本当のユベルさん!」 わあ!と口元を抑えるなまえは嬉しそうだ。まあそうだろう、今まで見えなかった精霊が見えているのだから。それも十代と超融合したユベルの存在だから余計に。 『これが君の大切な人かい』 「ああ。お前も見たことはあるだろ」 『何度か見たかもね』 なまえと違ってさして興味もなさそうになまえから視線を外したユベル。十代以外は興味がない、という感じだ。というより“十代の大切な人”という枠組みに自分以外の存在があって不機嫌を現わしている。 その態度になまえはあからさまに気分が落ちた表情を見せた。 「やっぱり…ユベルさんは私のこと嫌いですか」 『うん。少なくとも、十代をたぶらかした女に好きという感情は持てないよ』 「お、おいユベル!」 十代からユベルについて多少は聞いていたが、実際対面して目の前でそっけない態度をとられてショックを受ける。 なまえを庇うようにユベルを攻める言葉を投げかけた十代。大丈夫か、となまえを気遣う十代を見たユベルはあんぐりと口をあけた。 僕よりも、僕よりもそんな女を…! 『なっ 十代、君は僕よりもその女を大切に思ってるって言うのかい?』 「なんでそうなるんだよ!」 なまえの肩を抱く十代をじっと見るユベルは、そのまま視線をずらしてなまえを睨む。嫉妬といえば嫉妬だが、気に食わない、意味がわからないといった感情も混じった視線。 『…何、お前は僕のことがすきだっていうの?』 「は、い。好意は抱いてます」 『はあ?』 ますます意味がわからない。関わったのは今日が初めてだ。いくら十代から話を聞いていようと、初めて関わりをもったものに対して簡単に好意を抱けるものなのだろうか。 なまえを見る目は変なものを見るような目に代わり、なまえは少し圧倒されるが、負けることなく口を開いた。 「だって十代のことを一番に考えて、一番そばにいてくれるのはユベルさんなんでしょう」 『当たり前のことを聞かないでくれよ』 「私だって人だから、十代を一番に考えられない時だってある。いつだって一緒にはいられないから。だからユベルさんの存在は十代にとっても、私にとっても大切だと思うんだけど」 それに十代が好き同士で、気が合うんじゃないかなって。 …全く、能天気な女。人じゃないからって十代を奪えないとでも思ってるわけ?生憎、僕と十代は前世からの仲だから君が思っている以上に十代は僕のものなんだよ。君がいる間だって僕と十代はひとつで、すべて分かり合ってるんだ。十代が好き同士なんてレベルじゃなくてね。 「ユベルさんは十代とひとつなんですよね」 『…そうだけど』 「だったら十代ひとりだけを好きでいるのも何だか寂しいじゃないですか。人格は違っても、ユベルさんは十代でもあるわけですし」 ただの屁理屈にしか聞こえない気もするが。というかこの女ばかなんじゃないのか。こんなに僕に構って何の得をするんだ。仲良く?突然精霊が見えたくらいで僕と仲良くできるとでも? 呆れると言うか…脱力するというのが正しいか、なんとも十代の恋人だと妙に納得してしまうのが嫌だ。十代も僕と融合する前はこんなに明るく前向きで、元気な人間だったのだろう。類は友を呼ぶ、とよく言ったものだ。自分と似たような性質の恋人を選んだらしい。 「今は嫌いでも、いつか私のこと、少しでも好きになってくれたら嬉しいです」 それがなんだか、十代と重なる部分も見えてきて。 この女ならなんとか付き合っていけそうな気がする、なんて僕らしくない。 『…君のことを、邪険に扱わないでいてあげてもいいよ』 ツンケンとした言い方だったが、確かにユベルがなまえをそばにいていい人間だと許可したようだ。腕を組んで偉そうに言う割に、なまえを見る目が少し優しくなったのに十代はしっかりと気付いていた。 なまえもユベルのその言葉に手を合わせて満面の笑みを浮かべている。 そんな二人を見ながら十代は口が緩むのを隠せなかった。 ―――――――― 大変、十代が空気! 13.01.06. |