「あああ〜…また負けちゃった」 正面に座るなまえちゃんは負けたけれど笑顔だった。DMのデッキは持っているけれど、僕に比べたらまだまだ。城之内くんにも負けてしまうレベルだ。 本人は「勝つためじゃなくて楽しむためにやっている」と言っていたのでデュエルを楽しめればそれでいいらしい。勝てた方がいい気持ちだけど、と小さく付け加えていたのは可愛かったな。 「さすが遊戯くんだね」 「そんなことないよ。なまえちゃんも前よりうまくなってる」 「なら遊戯くんのアドバイスがいいんだよ」 僕としたあとは必ず僕にアドバイスを求めてくる。僕よりももう一人の僕の方がよさそうだけど、と提案したがなまえちゃんは僕を指名してくれた。だからこの役目は僕の役目。 ここでこうすればよかったとか、出すタイミングとか、色々アドバイスをしている間のなまえちゃんの目は真剣そのもの。ちゃんと聞いて理解して、次にやる時には応用で来ているところが凄いと思う。 「もっと力を入れればなまえちゃんも強くなると思うんだけどなあ」 「私?」 そんなことないよ、と笑う顔はやっぱり可愛い。彼女という贔屓なしにもなまえちゃんは可愛い。 「私、DMは苦手な部類に入るみたい」 「えっ そうなの」 「うん。他のゲームとかの方が飲みこみ早いなーって思う。難しいや」 確かに他のゲームの方が得意かな、という印象が強い。TVゲームなんかだと強いんだよね。逆に僕は負けちゃう率が高いんだけど、もう一人の僕といい勝負するくらいだった気がするな。 「でも遊戯くんが決闘王になったゲームだし、やめないよ」 「あ、ありがとう!」 「ふふ。弱いけど、時々でいいから相手してくれればいいんだ。遊戯くんとこうやって二人で遊べるのがすっごく楽しくて、嬉しいから」 そんなの、僕だって一緒だよ。 純粋に楽しむなまえちゃんと一緒にいると僕も純粋に楽しめて、原点に戻った感じがしてるんだ。僕にとってそれは大事なことだと思う。 こうしてなまえちゃんが「デュエルしよう!」って言ってくれることがどんなにうれしいか。伝えたことはないけれど、飛び上がるくらいうれしんだ。 もっとも、なまえちゃんとならどんなゲームでもいいんだけれど、ね。 ―――――――― 13.01.06. |