「寒くなったね」 そう言った獏良くんから白い息が宙を舞い、気温が低く寒いことを知らせる。 防寒はしているが如何せん寒い。制服のスカートを短くしすぎたことをこうして後悔するのは毎冬同じ。 「ね。私なんか指の感覚ないよ」 指だけじゃなくて顔も脚も感覚なくなってきてるけど。なんて言わなくても寒さで真っ赤だから言う必要もない。しかも言ったら言ったで見られそうで嫌だったので言わないでおく。 真っ白な指を見せて笑えば、ポケットに突っ込んでいた手を差し出される。 「じゃあこれ」 「え…っ」 私の手を取り、何かを握らせた獏良くんはそのまま暖かい手で私の手を包み込んだ。 わあ、暖かい。 吃驚したはずなのに思考は暢気なもので、目の前の欲を優先したらしい。 「カイロだよ」 寒くて持ってるんだよね〜と万人が癒される笑顔を浮かべて握られる。 あれ、あれれれ。よく考えれば獏良くん、私の手、握ってない?状況を理解した私は酷く取り乱す。 だってだって獏良くんとは仲がいいけどそんなまさか手を握るだなんてしたことないしね!?こんな寒さで鼻を赤くした美人さんに手を握られるなんて思ってもみないですし! 「ばばば獏良くん!?」 「こうしてた方が暖かいでしょ?」 ぎゅーっとして、終いには感覚のない指先を綺麗な手で擦られて赤面しているのが嫌でも分かる。獏良くんは終始笑顔で私の手を暖めてくれていた。 寒いのなんか、もう関係なくなってしまったですよ。 「あいつら、ここが下駄箱だって忘れてんだろ…」 「まあまあ城之内くん…」 ―――――――― 最後は城之内と遊戯です。下駄箱いちゃいちゃ。 初出:12.11.28. 加筆修正:12.12.29. |